色相環とは?色相同士の相対的な関係性を表現。
色相環とは、色相を環状に配置したもので、異なる色相同士の相対的な関係性を理解するのに役立ちます。現在最も広く利用されている色相環は、マンセル色相環と呼ばれるもので、赤・黄・緑・青・紫の5色とその間を埋める色の全20色相で構成されています。この環状に配置された色の中から、基準となる色を一つ選択し、その色からの相対的な位置関係をもとにさまざまな種類の配色を得ることができます。
人間の目は、800万〜1000万の異なる色を識別できると言われており、わずかな色の違いによっても人に与える印象は変わります。そのため、デザイナーにとって配色を決定することは常に難しい課題です。色相環を使った色の関係性や、それぞれの色の特徴を学ぶことで、デザインによって解決したい課題に対して論理的なアプローチを行うことができるようになります。これによって、配色の検討時のヒントを得たり、最終的な配色に対する論理的な理由づけを行うことができるようになります。
表色系と色 相環の関係性。色を表す方法はさまざま存在する
色相環はもともと、色を規則的に表記するルールである「表色系(ひょうしょくけい)」を構成する要素で、表色系において色を構成する色相を視覚的に表現したものとなります。英語名のカラーオーダーシステムという名前を聞くと、「色の注文に使うシステム?」と思われるかもしれませんが、ここでの"オーダー"は"並び順"や"秩序"を意味します。主な表色系としては、マンセル表色系の他に、日本色彩研究所が1964年に発表したPCCSや、1923年にドイツのノーベル賞化学者によって開発されたオストワルト表色系といったものも存在します。
マンセル表色系
マンセル表色系は、1905年にアメリカの画家、アルバート・マンセルによって考案されました。「色相(Hue)」「明度(Value)」「彩度(Chroma)」の3属性によって色を定義しています。
オストワルト表色系
オストワルト表色系は、ドイツのノーベル賞化学者オストワルトによって考案されました。「混色系」の表色系として知られ、明度や彩度という概念を持たず、明るさや鮮やかさは「白色量・黒色量・純色量」の割合で決まります。
PCCS(日本色研配色体系)
PCCSは、1964年に日本色彩研究所によって開発された色体系です。PCCSは、明度と彩度を合わせた「色調(トーン)」という概念を持っており、「色相」と「トーン」で色を表すことができるのが特徴です。
色相とは?色と色相の違い
英語だと、色はColor(カラー)、色相はHue(ヒュー)と呼ぶため、別のものとして認識しやすいですが、日本語だと色と色相はとても似ているので、同じような意味として捉えている人も多いのではないでしょうか?しかし、「色」が無数に存在するさまざまな色のことを指す一方、「色相」は赤・緑・青などの「色あいの種類」のことを指す言葉です。具体的な色を決めるのは、色の三要素である「色相」「彩度」「明度」であり、色相はあくまで色を構成する要素の一つに過ぎないのです。
色相の4分類。暖色・寒色・中性色・無彩色
色相環に表現される色相には、「暖色」「寒色」「中性色」の3種類があります。ここではこれに、白や黒などの色相環には含まれない「無彩色」を加えて色の4分類を紹介します。色相環はあくまでも「相対的な」色相の関係を表現するためのものであるため、ここでの分類は人に与える印象による細かい分類というよりは、あくまでも「赤系 = 火の色」「青系 = 水の色」という世界共通で認識できるレベルでの分類にとどめられています。
暖色
色相環の中でも、赤・オレンジ・黄色の並びに配置されている色を「暖色」と呼びます。その名の通り、暖かみのある色ですね。明るく、活動的、情熱的なイメージを与える色の並びとなります。
寒色
色相環の暖色の反対には、青系の色が並んでいます。これらの色を「寒色」と呼びます。こちらもその名の通り、寒い印象を与える色です。これらの色は、涼しさ・冷静さ・信頼性といった印象を与える色として知られています。
中性色
色相環上で暖色と寒色の間に位置する色をまとめて「中性色」と呼びます。緑系と紫系の色ですね。中性という名の通り、暖かさと寒さどちらの印象も与えない色となります。
無彩色
ここまで紹介した色相環上に表現される色をまとめて、有彩色と呼びます。色相環上では、それぞれの色の彩度を揃えるため、それぞれの色が、彩度の一番高い状態で表示されています。この彩度の高い状態は「その色の持つ個性を最も強く伝える」状態でもあります。例えば、赤という色は、彩度が高ければ高いほど暖かさをより強く表現し、彩度が下がると暖かさの表現は弱まります。そして、どの色でも色の彩度を最も低くするとグレーになります。このグレーの明度を下げると黒に、上げると白になります。この、黒・グレー・白のことを、彩度を持たない色「無彩色」と呼びます。
そして、白と黒、その間に存在するグレーの階調全てを含めて「グレースケール」と呼びます。コンピューターで表現できるグレースケールは全256種類存在します。しかし、実際のデザインの世界では、「グレー」の表現にはこの256種類のみではなく、彩度がとても低い有彩色を使うことも多いです。例えば、少しだけ青みがかかったグレーなどはUIデザインやWebデザインの背景色としてもよく見かけますね。このような色は「準無彩色」と呼ばれ、他の色との相対的な関係上の役割は無彩色と変わらないため、デザインの世界では無彩色と同じ用途で使われます。
明度、彩度とは?
ここまで紹介した通り、色相は赤・青・緑などの色あいの種類です。具体的な色を決定するためには、これに加えて「明度」と「彩度」を決定する必要があります。
明度とは「明るさの度合い」であり、どんな色でも明度を最大にすると白になり、明度を最低にすると黒になります。一方、彩度は「色の鮮やかさ」です。彩度が低いと全ての色はグレーになります。言い換えると、彩度は「色相の持つ個性の強さ」として考えることもできます。この組み合わせを調整することで、色の持つ雰囲気を自在に変えることができます。デザインツー ル上で、彩度(Hue)彩度(Saturation)明度(Brightness)をコントロールするHSBを使って色を調整すると、この変化がよくわかると思います。
色相環から考える配色の種類
色相環上で表現できる色の関係性は主に3種類あります。まず、基準となる色相を一つ選んで、その色相からの相対的な位置関係をもとに「安定感を与える色」「緊張感を与える色」などの配色を得ることができます。なんだか音楽のコードやスケール理論にも似ていますね。
類似色(アナロガス配色)
色相環上で、基準となる色相の両隣2色相を「類似色」と呼びます。その名の通り、基準の色相と似ているため、組み合わせて使うことで安定感を表現することができます。
反対色(トライアド配色)
反対色は、色相環上で基準となる色相の両斜めに位置する色相です。正確には、7から8色相離れた色相のことを指します。反対色という名前から、色相環の「反対側」に位置する色と勘違いしてしまいそうですが、そうではないため注意が必要です。反対色は、基準となる色相と組み合わせることでメリハリや緊張感を与えることができます。カラーパレットを作る際に、アクセントカラーとして反対色が選ばれることも多いです。
補色(ダイアード配色)
色相環上で、基準となる色相の反対に存在するのが「補色」です。補色は、基準の色相との違いがはっきりと分かりやすい色であり、「お互いを引き立てる」効果があります。基準色相と補色の組み合わせは、強 いインパクトを持ち、目立つ配色です。
お互いに主張の強い2色を組み合わせるこの配色は、彩度が高い状態で使用す るとギラギラした不快感を与えることで知られています。緑と赤は補色の関係ですが、緑の背景に赤の文字は見にくいですよね。このような色の境界がチラつく現象を「ハレーション」といいます。このハレーションを避けながら補色をうまく使うためには、彩度を下げる、2色の境界に無彩色を挟むなどの工夫が必要となります。補色は効果的な配色である一方、使い方に注意が必要なものでもあります。