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ビジネスモデルとは?図解で9種の事例と作り方を徹底解説!

最終更新日:2024.04.24編集部
ビジネスモデルとは?図解で9種の事例と作り方を徹底解説!

ビジネスモデルとは?事業が利益を生み出すための仕組み。

ビジネスモデルとは、事業が利益を生み出すための仕組みのことです。簡単にいうと、事業が「何をしてお金を稼ぐか?」ということですが、それに加えて「どの市場で事業をするか?」や「どのように価値を提供するのか?」といった側面まで明確化されることで、事業の実行・継続可能性や収益性などの評価を客観的に行いやすくなるというメリットがあります。また、他社の事業をビジネスモデルの観点から分析することで、自社との違いや強み・弱みといった構造的な面を論理的に比較することもできるようになります。

ビジネスモデルを構成する6つの要素

ビジネスモデルを構成する6つの要素

ビジネスモデルとは、簡単にいうと事業が「何をしてお金を稼ぐか?」であると述べましたが、これをさらに細分化すると主に以下の6つの側面があります。このそれぞれの問いに答える形で、事業の構造を論理的に整理することで、表面化しにくい事業機会やリスクまで把握することができるようになります。

Where「どの市場で事業をするのか?」

Where「どの市場で事業をするのか?」

どの市場で事業を行うのかは、事業の収益性のみならず、将来的な成長可能性にも大きく関係します。どの市場で事業をするのかを明確にすることで、市場の将来性などの環境要因まで評価することができるようになります。また、事業を行う市場が明確になると、他の市場に類似のサービスを提供することができるのか?他の国であればどうか?などといった問いも生まれてきます。

Who「誰から収益を得るのか?」

Where「どの市場で事業をするのか?」

誰からというのは、対象を絞れば絞るほど事業の方向性が明確になります。例えば、「日本人全員」よりも「日本国内の大学生」の方がよりイメージが掴みやすいですよね。また、ユーザーに対して無料で動画を配信して、広告主から収益を得るようなビジネスのような場合は、サービスの利用者と顧客を混同しないように気をつけましょう。このような場合は、あくまでも無料の動画でユーザーを集めるのは後述の「How(どのように価値を提供するのか?)」、つまり手段に過ぎず、収益を上げると言う意味でのビジネスの対象は広告主となります。また、誰から収益を得るのかは一見単純な問いですが、そのビジネスモデルにおいて他の誰かから収益を得る方法はないのかという問いを生み出すという点でも重要です。

What「どのような価値を提供するのか?」

What「どのような価値を提供するのか?」

どのような価値を提供するのかは、簡単に言うと「何を売るか?」です。しかし、単純に売り物の名前を挙げれば良い訳ではない点で注意が必要です。ここで重要なのは、その事業において顧客が何に価値を感じるかと言う点です。例えば、コーヒースタンドのビジネスモデルで「What = コーヒー」と定義してしまっては、競合との比較のしようがありません。顧客が何に魅力を感じてそのコーヒースタンドからコーヒーを購入するのかという点を明確化した上で、提供価値を定義しましょう。例えば、「朝の通勤時間でも1分で提供できるハンドドリップのコーヒー」など、顧客視点でのその事業の特別な価値を明確にしましょう。

How「どのように価値を提供するのか?」

How「どのように価値を提供するのか?」

どのように価値を提供するのかは、新規のビジネスモデルにとっての重要な指標である「実行可能性」と「継続可能性」を評価する際に役立ちます。また、この「どのように提供するか」で競合との差別化を図ることができるかもしれません。例えば、コロナ禍の中で登場した「冷凍餃子の無人販売」ビジネスは、この「どのように」を最適化することによって運用コストを下げてビジネスモデルの強みとした例です。

When「どのようなタイミングで事業を行うのか?」

How「どのように価値を提供するのか?」

ここでいう「タイミング」とはスケジュールの話ではありません。既存のビジネスであればもちろん現在進行形で事業を行なっていますし、新規事業であれば1年後、2年後かもしれません。これを明確化してもあまり役には立たなそうですよね。ここでの「タイミング」というのは、大きな時の流れの中で見た中での「いつ」のことです。つまり、事業を行う「今」とはどのような時代なのかという環境要因の分析です。例えば、2022年に日本で事業を行うのであれば、「コロナ禍」「円安」「リモートワーク」などの環境要因がビジネスモデルに影響するかもしれません。このような環境要因は、事業の将来性に最も大きな影響を与えるものです。今というタイミングを明確に把握した上で、そのメリット・デメリットを評価しましょう。

Why「なぜその事業に取り組む必要があるのか?」

Why「なぜその事業に取り組む必要があるのか?」

そして最後の問いが、「なぜその事業に取り組むべきなのか?」です。より明確にすると、なぜ「その企業が」その事業に取り組む必要があるのかという問いです。事業なのだから「お金を稼ぐため」というのが理由になりそうな感じがしますよね。しかし、それだけでは事業を成功に導くことは難しいです。なぜなら、どんなにユニークなビジネスモデルを構築したとしても、それが有効であることが分かれば他の企業も同じビジネスに参入してくるからです。その場合、優秀な人材を獲得して事業を拡大するための資金力での競争になり、資金力のない企業はすぐに負けてしまいます。

そこで、優秀な人材を惹きつけ、顧客に愛されるサービスを作る手段が必要になります。これが、「なぜその事業に取り組む必要があるのか?」という大義名分です。給与のために働く人と、企業のビジョンに共感して働く人では生み出す価値が異なることは想像に難くないと思います。また、消費者もビジョンを持った企業の製品に魅力を感じます。この「なぜ」を語ることの重要性は、ゴールデンサークル理論として知られ、多くの企業に取り入れられています。

これらの問いに対する答えを明確にした上で競合他社と比較し、自社のビジネスモデルが利益を上げ続けることができる理由に答えることができればそのビジネスモデルは有効であると言うことが出来ます。

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9種類の主要なビジネスモデルのパターンを図解で簡単に解説

ビジネスモデルにはいくつか主要なパターンがあり、どんなに複雑に見える企業もこのどれかのパターンであるか、またはこのいくつかの組み合わせである場合が多いです。まずはこのパターンを手がかりに、自社のビジネスモデル構築や他社のビジネスモデル分析に役立ててみてはいかがでしょうか?

販売モデル「作って売る」

販売モデル

販売モデルは、商品を作ることによって価値を生み出し、利益を得るというシンプルなビジネスモデルです。いわゆる「メーカー企業」というとイメージしやすいかもしれません。「作る」と言う点に強みを持つ企業が多く、逆に「どのように売るか」に関して課題を抱える企業が多いです。そのため、多くの企業が、複数の営業代理店や小売店などの「販売チャネル」を強みとした企業とパートナー関係を結ぶことでこの課題を解決します。このような外部の販売パートナーを使わずに、直接消費者に商品を届けることができる場合は、「直販モデル」と呼ばれ、この場合、流通のためのコストを抑えることができるという点で、収益性が高くなります。以前は、物理的な距離の問題から販売企業が一社で広範囲の販売網を構築することは難しかったため、小売業者を通しての販売が一般的でした。しかし、現代ではインターネットの発展により、販売企業がネットを通して直販を行うことが容易になり、このようなIT技術を駆使した直販モデルが「D2Cモデル(Direct to Consumer)」と呼ばれ注目されています。

例: 農家 / メーカー(自動車、家電など) / ファッションブランド

小売モデル「仕入れて売る」

小売モデル

小売モデルは、商品を仕入れて売るというビジネスモデルです。販売モデルが商品を「作る」のに対し、小売モデルは製品の製造・加工は行わず、あくまでも販売に特化しているという点に特徴があります。仕入れ価格と小売価格の差が小売ビジネスの主な収益源となります。小売ビジネスの持つ強みは「消費者へのリーチ」であり、メーカーがリーチできない消費者に商品を届けることができればできるほど、利益率が高くなります。極端な例としては、富士山の山頂でペットボトルの水が高いのは、メーカーがリーチすることが非常に難しい場所で小売業者が消費者にリーチしているからですね。これも小売業のビジネス戦略の一つです。一方で、薄利多売戦略で全体の利益を上げるという手法もよく使われます。この代表的な例がAmazonのビジネスモデルです。Amazonは、一つ一つの商品の利益率は低いものの、大量の消費者へのリーチを可能にした事により膨大な利益を上げました。

小売モデルの弱みとして、「過剰在庫」「売れ残り」というリスクがあります。仕入れたものがすべて売れない場合には、全体の利益率が下がる上、倉庫のコストもかかります。ITビジネスにおいては、小売ビジネスのこのようなリスクを回避するために、小売モデルと後述のマッチングモデルを組み合わせる場合が一般的です。Amazonも現在は小売モデルのみではなく、Amazonマーケットプレイスにて在庫リスクを回避した販売も併せて行なっています。

例: 百貨店 / スーパーマーケット / Amazon / zozotown

ライセンスモデル「商標・知財の利用権利を売る」

ライセンスモデル

ライセンスモデルは、商標・知財の利用権利を売るというビジネスです。販売との違いは、「所有権が購入者に渡らない」という点です。ライセンスビジネスには「何の」利用権利を売るかによって多くのバリエーションがあります。キャラクターの利用権利を売るのがキャラクタービジネスであり、マクドナルドなどのフランチャイズはビジネス自体の利用権を販売するという意味で一種のライセンス販売です。また、ファッション業界においても、「ライセンスブランド」というものが存在し、他社にブランド名の利用権を販売するというビジネスです。消費者から見るとブランド本体とライセンスブランドの違いがわからないことも多く、フランスの老舗ブランドの服を買ったと思ったら、実は国内企業がデザイン・生産した服に有名ブランド名が付いているだけだったというようなことがよく起こるのです。後述のサブスクリプションビジネスも「利用権利を売る」という点で似ているようにも見えますが、サブスクリプションビジネスがサービス自体の利用権を販売するのに対し、ライセンスでは商標や知財の利用権利を販売しており、購入者がそれを使ってまた利益を上げることを前提としています。

例: サンリオ / ライセンスブランド / フランチャイズ /

消耗品モデル「消耗品を長期的に売る」

消耗品モデル

消耗品モデルは、販売モデルの一種ですが、その戦略の特殊性から別のビジネスモデルとして紹介されることが多いです。海外ではカミソリ刃のビジネスモデル(Razor blade business model)と呼ばれ、ジレット社が「カミソリを安く販売し、替え刃を継続的に購入させることで利益を回収する」というビジネスモデルを生み出したことからこう呼ばれています。伝統的な販売モデルでは、消費者に同じ商品を何度も購入させ続けることは難しく、常に新商品開発や新規顧客獲得を行う必要がありました。この消耗品モデルの革新性は、「継続的に自社製品を購入させることができる」という点にあります。カミソリ本体を利益が低い・または出ないような価格で販売する代わりに、長期的に替え刃を購入してもらって投資を回収するというビジネスモデルを参考に、他業界でもこの構造を取り入れている例が多く見られます。コピー機メーカーは、コピー機を一度販売してしまえば対応のインクを継続的に購入してもらえることをうまく利用しています。また、SonyのPlayStationもゲーム機本体を安く購入してもらう代わりに、さまざまなゲームタイトルを購入してもらうことで利益を上げるというビジネスモデルです。PlayStationはカミソリと比べると高く感じるかもしれませんが、同等スペックのゲーミングPCでは価格が少なくともPlayStationの3倍にはなることを考えると、Sonyがこの消耗品モデルを念頭に価格を決定していることが見てとれます。

例: Gillette / Ricoh / Sony PlayStation

サブスクリプションモデル「サービスの利用権利を売る」

サブスクリプションモデル

サブスクリプションモデルは、サービスの利用権利を定期購入させるというビジネスモデルです。近年のITビジネスで最も頻繁に目にするビジネスモデルの一つですね。Netflixなどのコンテンツビジネスや、Notion、SlackなどのSaasビジネスなどで多く採用されています。消耗品モデルと同じく、それぞれの消費者から継続的に利益を上げ続けることを目的とするビジネスモデルです。このビジネスモデルでは、新規顧客を獲得することと、退会率を下げることが重要なビジネス指標となります。提供するサービスの質を上げることはもちろん大前提ですが、新規顧客獲得の戦略として無料でも基本機能が使えるような「フリーミアム」を導入したり、退会率を下げるために常に機能改善を行うといった施策が行われます。

モバイルアプリなどでは、AppleのApp Storeなどのプラットフォームの提供するサブスクリプションシステムを利用してサービスを提供することがあります。その場合、プラットフォーム側の仕様変更が退会率を変動させるなどの環境的影響がリスクとなる場合があります。かつて、ガラケーの時代にはサービスのサブスクリプション料金は携帯キャリアを通して携帯料金に追加される形で利用者に請求されており、ユーザーにとっては何に料金を支払っているのかが分かりにくい上、退会の方法が煩雑でした。これが、サービスは利用していないもののお金は払い続けているという「休眠顧客」を多く生み出していました。この休眠顧客がサービス側にとっては一定の収益源となっていた訳です。しかし、App Storeなどではサブスクリプションの解約動線を明確に設けているため、休眠顧客が退会してしまう可能性が高く、退会率を下げるためにはサービスの質を高く保つことが昔以上に求められています。ガラケー向けのサービスからiOSアプリへと移行したサービスでは、以前と比べて退会率が高くなるという現象がよく見られます。これもプラットフォームが個々のビジネスに与えるインパクトの一つです。

例: Netflix / Spotify / Amazon Prime / Notion / Slack

マッチングモデル「出会いの機会を売る」

マッチングモデル

マッチングモデルは、インターネット上に出会いの機会を生み出す事によって、そこに集まる人から収益を上げるビジネスモデルです。マッチングモデルには、「誰と誰の」出会いの機会を生み出すかによって多くの種類があります。コンテンツ発信者と視聴者の出会いの機会を提供するYouTubeや、販売者と購入者をつなぐメルカリ、楽天、パートナーとの出会いの機会を提供するTinderなどです。

マッチングモデルには、その「多くの人が集まる」という特性から特定の収益構造に収まらない複合的なビジネスに発展するケースがあります。マッチングの手数料のみならず、広告枠、プレミアム機能へのアクセスなど非常に多くの課金ポイントを設けることができるため、これらを取り入れた上で「プラットフォームビジネス」と呼ばれるものに発展するのです。また、利用者が増えれば増えるほど、プラットフォームの価値が高くなることも特徴で、例に挙げた企業を見ても分かる通り、巨大なインターネット企業へと成長した企業の多くはこのビジネスモデルをもとに成長を遂げています。

例: メルカリ / YouTube / Tinder / Airbnb / 楽天 / Uber

広告モデル「広告枠を売る」

広告モデル

広告モデルは、広告枠を売ることで利益を上げるビジネスモデルです。屋外広告や雑誌の紙面、テレビCMといった伝統的なものから、インターネット上の広告など、人の目に触れる場所であればどこでも広告モデルにて収益を上げるチャンスがあります。広告モデルでは一般的に、「何回見られるか」という指標によってその価格が決まります。多くの人の目に触れる場所の方が、少数の目に触れる場所よりも高い広告単価で販売することができるのです。また、インターネット上ではユーザーの年齢や性別、趣味趣向といった属性情報を取得することができるため、不特定多数への配信ではなく、広告主が意図するターゲット層に対しての広告表示をするといったことが可能になります。この広告モデルは、人が集まれば利益が上げられるという特性から、他のビジネスモデルと組み合わせて使われることも多いです。YouTubeはYouTubeプレミアムに対するフリーミアムとして機能しつつも、広告モデルによって利益も上げています。漫画アプリにて、広告を見るか課金するかどちらかの方法で漫画を読むことができるのは、「漫画を売ってユーザーからお金を受け取る」と「漫画を読むユーザの情報を売って広告主からお金を受け取る」という2つのビジネスモデルから、それぞれのユーザーにとって都合の良い方を選択させているのです。

例: YouTube / Webメディア / モバイルアプリ

コンサルティングモデル「知見を売る」

コンサルティングモデル

コンサルティングモデルは、特定の分野における知見を売ることによって利益を上げるビジネスモデルです。コンサルティングというと、「経営コンサルティング」をイメージされることが多いですが、実際にはコンサルティングにもさまざまな分野があり、デザインコンサルティング、ITコンサルティング、危機管理コンサルティングなど多岐に渡ります。コンサルティングと後述のエージェンシーモデルとの違いは、エージェンシーが業務の実行を主な責任領域とするのに対し、コンサルティングはあくまでも課題解決のための提案を行うことが主な仕事であるという点です。

コンサルティングというと、その知見を活かして提案をするという側面から「アドバイザー」のように捉えられることもあります。しかし、実際の大手コンサルティング企業などの仕事を見ると、特定分野の知見をもとにアドバイスするというよりも、あらゆる課題について論理的に分析し、解決策を導くような「課題解決」という分野において専門性を持った集団であることがわかります。

例: BCG / マッキンゼー・アンド・カンパニー / アクセンチュア

エージェンシーモデル「スキルを売る」

エージェンシーモデル

エージェンシーモデルは、その専門知識を活かしながら、他社の業務を代行する事によって利益を上げるビジネスモデルです。クライアント企業内部の人材だけでは遂行することが出来ないような業務があるときに、外部のエージェンシーの力を借りて目的を達成するようなケースで活躍します。システム開発会社や営業代行会社などがこのビジネスモデルに当てはまります。エージェンシーとの契約は、大きく委託契約と準委任契約の2種類が存在し、委託契約では対象業務を完全にエージェンシーに委託するような場合に採用されます。この場合、エージェンシーは契約で決められた成果物を納品することに責任を持ちます。一方、準委任契約ではエージェンシーは成果物の納品に責任を持たず、契約で決められた時間の業務を遂行する事に責任を持ちます。どちらの契約形態であっても基本的に、エージェンシー企業の持つスキルや知見を活かして目的の業務を遂行し「成果を上げること」が期待されているという点が特徴です。この点が、会社の「人材不足を補う」という目的のものに利用される人材派遣との違いです。

例: システム開発会社 / デザイン会社 / 営業代行会社

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常識に逆らうことで生まれる新しいビジネスモデル

多くの企業活動は、前項で紹介した9つのビジネスモデルのどれか、またはその組み合わせであることが多いです。ビジネスモデルを明確に定義することは企業にとって重要なことではありますが、ビジネスモデルが必ずしも革新的である必要はありません。それぞれのビジネスモデルに求められる主要な価値が競合より優れていれば十分に利益を上げられるビジネスとなります。例えば、競合の持たないチャネルを持っている、競合より低コストで製品を生産できるなどです。しかしながら、型破りなビジネスモデルによって優れたビジネスを構築する企業も多々あります。消耗品モデルで紹介したジレット社の例などは、十分に利益の出る価格で商品を売るという常識に逆らったユニークなビジネスモデルでした。ここでは、このようにユニークなビジネスモデルによって収益を得る企業を紹介します。

Milesのビジネスモデル。歩くだけでポイントがもらえる?

Miles

https://apps.apple.com/jp/app/id1393913947

Milesは、「移動した距離に応じてポイントが貯まる」というコンセプトのシリコンバレー発モバイルアプリのスタートアップです。2021年10月には日本でのサービスも開始し、歩くだけでポイントが貯まり、割引券やAmazonギフト券と交換できるという珍しいサービスとしてメディアでも多く取り上げられました。サービス利用料は無料であるため、このサービスはどのように収益を上げるのかが気になりますね。

実はMilesのビジネスモデルは実にシンプルです。割引券などをユーザーがお店に足を運ぶための「きっかけ」としてもらい、Milesはそれぞれの加盟店から送客に対する成功報酬を受け取るのです。つまり、Milesのビジネスモデルは「ユーザーが加盟店に足を運ぶきっかけを生み出して送客手数料を稼ぐ」という事になります。さらに、Milesはユーザーの移動データをもとに行動パターンを特定することができ、加盟店はこのデータをもとにターゲットを絞って特定のユーザーに自社の特典を表示することが出来ます。意見するとどこで収益を上げるのかわかりにくいようなビジネスの裏には、このようにユニークな発想で生まれたビジネスモデルが隠れていることが多々あります。

タダコピのビジネスモデル。コピー機が無料で使える?

タダコピ

http://www.tadacopy.com/

タダコピもMilesと同じくユーザーに対して無料でサービスを提供する企業で、その名の通り「無料でコピー機を使える」サービスを提供しています。日本全国200近くのキャンパスに設置されており、コピー機を利用する学生はお金を払わずに無料で使うことが出来ます。しかし、コピー機本体はもちろん、コピー用紙やインク代などの運用コストまでかかるようなものを無料で提供しているこのビジネスはどのように収益を上げているのでしょうか?こちらもビジネスモデルは非常にシンプルで、「コピー用紙の裏を広告枠として販売」しているのです。タダコピの顧客となる企業は学生向けの広告を学生が使うコピー用紙の裏に予め印刷してもらうことで、コピー機を利用した学生から印刷された紙を受け取った学生までをターゲットとして広告表示機会を得るのです。広告ビジネスモデルの解説で、「人の目に触れる場所であればどこでも広告モデルにて収益を上げるチャンスがある」と述べましたが、このタダコピは人の目に触れる機会を自ら生み出して事業機会としてという点で非常にユニークなビジネスモデルです。

ビジネスモデルの作り方。「自社のビジネスモデルが利益を上げ続けることができる理由」が明確になるまで、「定義・評価・改善」を繰り返す。

ビジネスモデルの作り方

ビジネスモデルを明確に定義することの目的は、事業を客観的に評価できるようにすることです。まずは、「ビジネスモデルを構成する6つの要素」で紹介した5W1Hに当てはめてビジネスモデルを定義しましょう。競合他社のビジネスモデルについても同様に定義した上で、「優位性」「実現可能性」「継続可能性」について自身のビジネスモデルと比較、評価しましょう。「自社のビジネスモデルが利益を上げ続けることができる理由」が明確になれば、そのビジネスモデルの具体的な実行計画を考えるステップに進むことができます。逆に、これが明確になるまでは、修正や方向転換を繰り返します。

  1. ビジネスモデルを定義

  2. 「優位性」「実現可能性」「継続可能性」を評価

  3. 「自社のビジネスモデルが利益を上げ続けることができる理由」が明確になるまで繰り返す

ビジネスモデルキャンバスによる定義

ビジネスモデルキャンバス

今回の記事では、5W1Hを使ったビジネスモデルの定義を紹介しました。この手法だと、ビジネスモデルを定義するための主要な問いに答える形でビジネスモデルの可視化ができるため、アイデア出しや他社の分析の足がかりとして非常に有効です。しかし、さらに細かくビジネスモデルを可視化したい場合や、わかりやすく他の人にビジネスモデルの内容を伝えたい場合には「ビジネスモデルキャンバス」を使ったビジネスモデルの可視化を行うことをおすすめします。

ビジネスモデルキャンバスとは、ビジネスの構造を設計図のような状態に書き起こしたもので。複雑なビジネスでも簡潔にまとめて可視化することができるため、多くの企業に取り入れられています。5W1Hと根本的な考えは同じものの、ビジネスの要素をより細かく9つに分割して定義します。

  1. 顧客(Customer Segment)

  2. 提供価値(Value Propositions)

  3. 販路(Channels)

  4. 顧客との関係(Customer Relationships)

  5. 収益の流れ(Revenue Streams)

  6. 主要な資源(Key Resources)

  7. 主要な活動(Key Activities)

5W1Hと同じく、ビジネスモデルキャンバスにおいても重要な点は、単にそれぞれの項目を埋めるのではなく、それぞれの要素が「顧客にとっての価値」や、「競合に対する優位性」を生む理由を説明するようなものになるように意識して取り組むことです。ビジネスモデルキャンバスについては、以下の記事でより詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

ビジネスモデルを改善・発展させる方法

ビジネスモデルを完成させるためには、「自社のビジネスモデルが利益を上げ続けることができる理由」が明確になるまで、「定義・評価・改善」を繰り返すと述べました。では、一度定義したビジネスモデルがまだ、他者に対する圧倒的な優位性を持っていない場合、どのような手法で改善したら良いのでしょうか?まずは、それぞれの要素が「顧客にとっての価値」や、「競合に対する優位性」に繋がるかという観点でより具体性を付与していくと良いでしょう。例えば、「美味しいフランス料理を提供」では競合に勝てないと感じたなら、「フランスにて10年修行したシェフの監修によるフランス料理を提供」にするなどです。具体性を付与するだけではどうしても上手くいかないと感じた場合は、他の視点が必要になってくるかもしれません。そんな時に役に立つのが、SCAMPER法です。

SCAMPER法によるビジネスモデルの改善・発展

SCAMPER法

5W1Hを使う場合であっても、ビジネスモデルキャンバスを使う場合であっても、ビジネスモデルを可視化することの大きなメリットは事業をさまざまな側面ごとに可視化できるという点です。そして、ビジネスモデルを修正する際には、それぞれの側面ごとに改善策がないかを模索します。ここで役に立つのが、SCAMPER(スキャンパー)法という手法です。SCAMPER法とは、以下の7つの問いの頭文字を取ったもので、アイデアを論理的に発展させるためのフレームワークです。

  • Substitute(何かで代用できないか?)

  • Combine(何かと組み合わせることはできないか?)

  • Adapt(他のものを応用できないか?)

  • Modify(どこかを修正することはできないか?)

  • Put to other uses(何かに転用できないか?)

  • Eliminate(何かを削減できないか?)

  • Reverse / Rearrange(何かを逆転したり組み替えたりできないか?)

ビジネスモデルのそれぞれの要素に対して、これらの問いを当てはめてアイデアを練ってみましょう。例えば、今回紹介したMilesの例では、もともとポイントの計算のために集めた「ユーザーの移動データ」という「資源」に対して、「何かに転用できないか?」という問いを投げかけることで、「企業の広告ターゲティングに利用する」という更なる強みを導き出したのかもしれませんね。Milesの例をはじめ、革新的なビジネスモデルには、このような多角的な面からの再構築を行うことで生まれたような事例が多くみられます。

まとめ

今回は、ビジネスモデルを構成する要素や主要なパターン、そして優れたビジネスモデルを作るための手法について紹介しました。物流やインターネットの発展により、どのビジネスにおいても他社との競争から逃れることができない世の中において、事業の構造自体に優位性を持つことの重要性はますます強くなっています。既存の事業であっても、今回紹介した手法を参考にビジネスモデルを可視化すると、新たなる可能性や課題が見つかるかもしれません。また、自身が経営や事業計画に携わる職種ではない場合においても、自社・競合・クライアントなどのビジネスモデルを構造的に理解できると、ロジカルな分析や提案ができるようになり、日々の業務にも役立つことが必ずあるはずです。

ビジネスモデルに関するよくある質問

Qビジネスモデルとは?

Aビジネスモデルとは、事業が利益を生み出すための仕組みのことです。お金の流れに加えて、「どの市場で事業をするか?」や「どのように価値を提供するのか?」といった側面までビジネスモデルとして明確化することで、事業の実行・継続可能性や収益性などの評価や比較を客観的に行いやすくなるというメリットがあります。

Qビジネスモデルの6つの要素とは?

Aビジネスモデルの重要な側面を細分化すると、「What: どのような価値を提供するのか?」「Who: 誰から収益を得るのか?」「When: どのようなタイミングで事業を行うのか?」「Why: なぜその事業に取り組む必要があるのか?」「Where: どの市場で事業をするのか?」「How: どのように価値を提供するのか?」という5W1Hの6つに分けることができます。

Qビジネスモデルが面白い企業は?

Aタダコピは、その名の通り学生が「無料でコピー機を使える」サービスを提供しています。しかし、コピー機本体はもちろん、コピー用紙やインク代などの運用コストまでかかるようなものを無料で提供しているこのビジネスはどのように収益を上げているのでしょうか?実はタダコピのビジネスモデルは非常にシンプルで、「コピー用紙の裏を広告枠として販売」しているのです。タダコピの顧客となる企業は学生向けの広告を学生が使うコピー用紙の裏に予め印刷してもらうことで、コピー機を利用した学生から印刷された紙を受け取った学生までをターゲットとして広告表示機会を得るのです。

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