プレスリリース

2012年04月24日

ユニクロ銀座店オープンの舞台裏~「考える人」2012年春号~

~「考える人」2012年春号(新潮社)より転載~

銀座から世界のユニクロへ

グループ上席執行役員
大笘直樹 (Otoma Naoki)

ユニクロ銀座店 世界中のファッション・ブランドが軒を連ねる文化と情報の発信基地・銀座。日本を代表する街のメイン・ストリートに、ユニクロ銀座店が二〇一二年三月十六日にオープンした。ビルの一階から十二階すべてが売場、売場面積千五百坪と世界最大の規模を誇る大型店舗である。
 ユニクロ銀座店は、世界で九番目のグローバル旗艦店である。「ユニクロの成長エンジン」とも位置づけられるグローバル旗艦店は、文化の発信地である各国のハイ・ストリートにあり、「最新・最旬」の品揃えを誇る。〇六年十一月、ニューヨークのソーホーでの出店を皮切りに、ロンドン、パリ、上海、大阪、台北、ニューヨークの五番街、ソウルと、世界七都市に八つのグローバル旗艦店を出店。第九の旗艦店として、満を持して東京に登場するのが、このユニクロ銀座店だ。
「日本ではまだまだユニクロがグローバル・ブランドであると認識されていません。ここ銀座で最新・最鋭の商品を提供することで、ユニクロが世界一のファッション・ブランドである、ということを日本から世界に向けて発信していきたい」(柳井正代表取締役会長兼社長)
「世界に対して、〝ユニクロとはこういうブランドですよ〟という自己紹介はある程度できたと思います。次のフェーズとして、本当の意味での革新的な情報を発信しなければいけない。銀座店はそれを表現する場所」(クリエイティブ・ディレクター、佐藤可士和氏)
 そう語るように、ユニクロは銀座店出店を、さらなる世界展開のための大事な試金石と位置づけている。
 営業本部長としてユニクロの世界戦略に携り、アジアと日本の統括責任者として銀座店の出店を主導してきた大笘直樹グループ上席執行役員も、「銀座店はユニクロが今後さらに成長するために、重要な第一歩となるものです」と語る。

〝新しいユニクロ〟を銀座から

「グローバル旗艦店の役割というものは非常に重要で、それは単にユニクロの商品を売るだけではなく、ユニクロというブランドに込められた想いや思想というものを表現する場所でなくてはならないと我々は考えています。立地や外観から、店内の空間、スタッフの人間性やサービスにいたるまで、すべてにおいてそれが表わされていなければなりません。
 もちろん我々の提供する服をご購入いただくのが究極の目標ですが、それだけではなく、来店自体を楽しんでいただいたり、その街と良い相互作用が生まれるような店舗づくりであったり、時代性も反映していかなければいけない。それが表現されていることが、旗艦店には求められます。
 その旗艦店を、これからもっともっと世界中に増やしていきたいと考えています。幸い日本ではすでに高いシェアを誇り、多くの人にユニクロのことを知っていただいています。しかし、世界に目を向けると、まだまだこれから。すでに九つの旗艦店をはじめ、海外の店舗数が昨年の段階で二百を超えましたが、それでもまだ我々の求める水準の知名度には達していません。
 世界中のできるだけ多くの人に、それも短時間でユニクロのことを知っていただくためには、情報発信力のある場所がどうしても必要です。そのために旗艦店があり、そこは世界への情報発信力をもった場所でなければいけません。
 その旗艦店をいよいよ東京の銀座にオープンしました。日本生まれのブランドであるユニクロが、次のステージへ行くためのスタートを、ここ銀座で切る。新しいユニクロ、つまり正真正銘の世界ブランドになるためのスタートを象徴するのが、この銀座店なのです。
 また、日本では昨年東日本大震災という大変悲しい出来事がありました。多くの人が人生観の見直しを迫られ、あらためて『生きる意味とは? 幸せとは何か?』と問う機会も多くあったと思います。さらに日本の景気がなかなか上向かず、ユーロ危機などの影響もあり、世界経済の行方が不安視されています。そうした、ともすると将来に不安を感じ暗いムードになりがちな現在において、『日本からもう一回元気になろう』。そんなメッセージを銀座から発信していきたいと考えています」

世界のハイ・ストリートが主戦場

「〇六年に初のグローバル旗艦店をニューヨークのソーホーに出店したときから、いずれ東京にも旗艦店を出店したいと考えていました。
 ソーホーへの出店は、偶然の産物でもあります。アメリカ進出は、郊外への出店から始まりました。モータリゼーションの著しいアメリカ郊外は、完全にモール文化です。ところが、これが成功しなかった。大量の在庫を抱えてしまったのですが、今さら商品を日本に戻すわけにもいかない。どうにかしてアメリカで売る方法はないかと探っていたところ、偶然にもマンハッタンのソーホーに物件の空きが出た。そこで売り出したところ、大成功したのです。その動きを見た柳井が、『ここに大型店舗を作ろう。それでダメだったらアメリカ進出は再検討しなければいけない』と、いわば背水の陣で臨んだのが、グローバル旗艦店の第一号となったのです。それから〇七年のロンドン、〇九年パリと続き、いずれも成功を収めたことで、ユニクロのグローバル戦略がより具体的になっていきました。
 その流れを受けて、日本にも旗艦店をオープンさせることを考え、一〇年には大阪の心斎橋に出店。東京ならばやはり銀座だろうということで、具体的な物件情報の収集を始め、一〇年三月の着工と相成りました。
 銀座という街を選んだことに関しては、迷いも逡巡もありませんでした。世界一のグローバル・ブランドを目指す我々の主戦場は、世界中のハイ・ストリート。ニューヨークの五番街やロンドンのオックスフォード・ストリート、パリのオペラ地区に比肩する東京の街は、やはり銀座しかありません。
 昨年十月にオープンした、七つ目のグローバル旗艦店であるニューヨーク五番街店が成功したことで、我々は確かな手ごたえを感じていました。ニューヨークから世界に情報発信した後に、今度は、日本の銀座に旗艦店をオープンすることで、日本から世界に情報発信できる。この最高のタイミングで銀座店をオープンできたのは、偶然でもあり必然だったのかもしれません」

世界の評価を日本に還元

「すでに日本のみなさまにはユニクロを上手に利用していた20120411_img6.jpgだいています。アウターとして、あるいはインナーとして、他店商品とユニクロを上手に組み合わせるなど、フレキシブルなコーディネイトを見ていると、我々も得るものがとても大きい。ユニクロは日本のみなさまに育てていただいていると言っても過言ではありません。その日本人の持つ品質やデザイン、機能性に対する感覚というものを、我々は常に商品にフィードバックさせています。
 例えば、日本人は合繊の服に抵抗がありません。軽くて防風・保温性も高くて手入れも簡単と、好まれています。しかし、ヨーロッパの人は、合繊よりも自然素材を好む傾向にあります。ヒートテックを売り出すときのマーケット調査でも、『合繊のインナーはヨーロッパでは売れない』というネガティブな意見があり、当時はそれが業界の常識でした。
 ところが、フタを開けてみたら大ヒット。ヨーロッパの人は合繊そのものがダメだったのではなく、それまでの合繊に対するイメージが『肌にまとわりつくし、着心地が良くない』というもので、それが克服されたヒートテックは広く受け入れられたのです。
 日本のみなさまが認めたものを世界の人も評価してくれている、ということを、我々ユニクロを通して知ってもらいたいのです。それでもっと自信を持っていただければ、こんなにありがたいことはありません。いろいろ困難な問題が山積みの日本ですが、まだまだ捨てたものではありませんし、我々日本発のブランドであるユニクロが、日本人の素晴らしさや日本企業の底力というものを世界に向けてアピールしていきたい。
 言語の壁などもあって、世界でどうユニクロが認められ、ニュースになっているかということを、なかなか日本の人が知る機会はありません。世界での評価を、我々の商品や店舗を通して、日本のみなさまに還元していく――。それが銀座店に課せられた大きな使命でもあります」

銀座店ならではの魅力

「グローバルな評価を大事にする一方で、銀座店ならではのローカリティやオリジナリティも大事にしていきたいと考えています。
 銀座店のオープンとともにデビューするのが、『UNDERCOVER』とのコラボレーション・ライン『U』です。デザイナーの高橋盾さんは世界でも注目されているクリエイターの一人で、これまでのユニクロにはない、革新的なラインナップになると期待しています。また、今まさに世界を舞台に活躍している、錦織圭選手モデルのウェアも、店舗としてはここ銀座店のみで提供します(インターネット販売有)。さらにTシャツシリーズの『UT』や、高い機能性とデザイン性を兼ね備えた『UIP』など、最新・最旬の商品を揃えています。
 また、銀座という街の特徴として、外国人のお客さまが非常に多いことがあげられます。来店されるお客さまの二~三割は外国の方で、売り上げの割合はもっと高いというデータもある。『グローバル旗艦店』という名に恥じぬよう、約百名の外国人スタッフを揃え、英語や中国語、韓国語など五カ国語に対応できるような体制を敷いています。
 銀座店は十二フロアーといままでにない規模なので、他の店よりはるかに多くの商品を展開することができます。そのため、より一層優れた演出やプレゼンテーションが求められます。また、たくさんの商品バリエーションの中から、お客さまに合わせたコーディネーションをどんどん提案していくようなサービスが、今まで以上に求められるでしょう。
 例えば、今年の春はカラーパンツを打ち出していきますが、それまで『赤や緑のカラーパンツなんて派手過ぎて敬遠してしまう』と思っていた人にも、スタッフが全身のコーディネイトを上手に提案することで、その抵抗感を払拭することができるかもしれない。そうした日常におけるちょっとしたチャレンジをすることで、新しい自分発見を、服を媒介に喚起できれば、すばらしいですよね」

世界一のブランドへ

「我々ユニクロには、『世界一のファッション・ブランドになる』という明確な目標があります。そのために、『二〇二〇年に売り上げ高五兆円、経常利益一兆円』という具体的な数字を掲げました。『世界一位。売り上げ五兆円』というのは確かに高いハードルです。しかしビジネスもスポーツと一緒で、高い目標を掲げて一生懸命練習すれば、自ずと結果はついてくるはずです。常に探究心をもち、決して諦めず努力すれば、できないことはありません。
 オープンした銀座店は、その新しいユニクロの目標実現のための大きな一歩です。よく、一店舗だけでそんなに変わるのか、と聞かれるのですが、それについては『YES!』と即答です。全ては『一』から始まります。我々は本気でそう考えているのです」

ユニクロは、世界で9番目となるグローバル旗艦店「ユニクロ銀座店」を、2012年3月16日銀座のメイン・ストリートである中央通り沿いにオープンいたしました。「ユニクロ銀座店」は、売場面積約1500坪、1~12階全フロアがユニクロという世界最大の店舗です。メンズ、ウィメンズ、キッズ&ベビー、UTと全てのカテゴリーを取り揃え、世界的なファッションの中心地・銀座から世界中のお客さまへ、最新・最旬のユニクロを発信していきます。

「考える人」2012年春号
(文/取材 : 新潮社編集部、撮影 : 菅野健児)
詳しくは、新潮社のホームページをご覧下さい。