横浜F・マリノス、追求してきた攻撃的サッカーで結実。3年ぶり5度目のリーグ優勝

サッカー

2022.11.8

2022 J1リーグ 最終節 横浜FMが優勝 写真:徳原隆元_アフロ.jpg
2022 J1リーグ 最終節 横浜FMが優勝 写真:徳原隆元_アフロ

川崎フロンターレのシーズン終盤の追い上げで最終節まで持ち込まれたJ1リーグの優勝争いは、横浜F・マリノスがアウェイでヴィッセル神戸に3-1と快勝して3年ぶり5度目のリーグ優勝を遂げた。追求してきた攻撃的サッカーを披露してつかんだ栄誉となった。

マリノスが追求してきた攻撃的サッカーで、答えを出した。

2019年の前回の優勝から3年。マリノスはその翌年は9位と苦しんだが、2021年はシーズン途中の監督交代がありながらも2位に入る健闘だった。だが、優勝した川崎に勝点13差をつけられていた。

それが今季は開幕2節で川崎に4-2と快勝するなど、シーズンの早い時期からチームの積み上げを感じさせる試合を披露してきた。

5月29日の16節で磐田戦に勝利して首位に立つと、そこからは6連勝を含めて9試合負けなしで首位をキープ。9月3日の28節でFC東京に引き分けて一度2位に後退したが、翌9月7日の試合で湘南に勝って再び首位を奪回。その後は最後まで走り抜けた。振り返れば、今季全34節中18節で首位に立つ戦いぶりだった。

最終戦の神戸は、今季ACL(AFCチャンピオンズリーグ)の決勝トーナメント1回戦で2-3と敗れて8強入りを阻まれた相手だったが、今回は相手の倍以上の15本のシュートで相手ゴールに迫り、エウベル選手が前半26分に先制。

前半終了間際にFW武藤嘉紀選手に同点にされたが、後半8分に西村選手が得点して均衡を破ると、後半28分にはFW仲川輝人選手が交代出場から3分後に追加点を決めて3-1で勝利。優勝を決めた。

マリノスは攻守の切り替えが速く、スピード感のある流れるような攻撃は相手には脅威だが、見る者を楽しませた。

FWエウベル選手とFW水沼宏太選手の両サイド、中央の西村選手とトップに入る選手の連携で相手ゴールに迫り、MF喜田拓也選手、MF渡辺皓大選手、MF藤田譲瑠チマ選手、最終ラインでも活躍したDF岩田智輝選手らボランチの質の高さが攻守にチームを支えた。

プレーの熟成度や選手層という点でも、シーズン途中に西村選手や長期離脱を強いられたFW宮市亮選手らを負傷で欠いてもチームが揺らぐことはなかった。

その攻撃力は数字にも表れている。

リーグ得点ランクのトップ10に、11得点のFWレオ・セアラ選手とFWアンデルソン・ロペス選手、10得点のFW西村拓真選手が名を連ねている。

チームの総得点70は今季リーグ最多。総失点35は名古屋と並ぶリーグ最少タイで、堅実な守備が攻撃力を後押しした。

得失点差でも常に優位に立ち、最終戦を前にした川崎との得失点差は11。仮にマリノスが引き分けて川崎が勝って勝点で並んでも追いつけない状況で、相手に暗黙のプレッシャーをかけた。

リーグ終盤の中断で切り替え

終盤、条件次第で優勝が決まる10月8日のガンバ大阪戦、12日のジュビロ磐田戦のホームでの2連戦で今季初の連敗を喫して、川崎に勝点差を8から2にまで詰められ、嫌なムードが漂いかけた。

だが、そこでリーグは天皇杯決勝とルヴァンカップ決勝の開催で約2週間中断に入り、その中断がマリノスにとって奏功した。

32歳で初のJタイトル獲得となった水沼選手も、「リーグ戦でなかった2連敗でへこんだところはあったが、中断を利用して気持ちを切り替えられた」と言い、中断期間中にあった天皇杯やルヴァンカップの決勝を見て、「自分たちがどれだけ勝ちたいか、その気持ちが足りなかったと改めて感じることができた」と、気持ちを新たにしてその後の試合に臨んでいた。

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2022 J1リーグ 写真:千葉 格/アフロ

そして、中断明けの10月29日のホームでの浦和レッズ戦で、マリノスは本来の躍動感溢れる攻撃的な姿で4-1と快勝。「自分たちらしさを取り戻せたのがよかった」(水沼選手)と、勝点と得失点差を伸ばしただけでなく、自信も再確認すると、その勢いと好調ぶりは最後の一戦でも陰ることはなかった。

昨年7月から、セルティックへ移った前任のアンジェ・ポステコグルー監督のあとを受けてチームを率いてきたケヴィン・マスカット監督は、就任から1年4か月弱でチームを国内リーグ制覇に導いた。

オーストラリア出身49歳の指揮官は、「今日の勝利、結果だけでなく、勝ち方がすばらしかった。選手たちをとても誇らしく思う。我々は挑戦を通して多くの瞬間を作ることに取り組んできて、そして今日、優勝を遂げたチームとして歴史に残る瞬間を作った」と満足そうな笑顔で選手たちを称えた。

キャプテンの喜田選手も「感無量」と喜んだ。

「優勝に王手をかけてから少し時間がかかったが、苦しいときにもみんなが一つになってブレずにひたむきにやってきた。お互いを信じる気持ちを常に持ってきたし、それがこのチームの強み。みんなが報われてよかった、みんなに感謝したい」と語った。

J1リーグ優勝決定から一夜明けた6日、今季の最優秀選手やベストイレブンの候補となるJリーグ優秀選手30人が発表になり、マリノスからは水沼選手、エウベル選手ら10人が名を連ねた。それも今季のチームの成果を示すものにほかならない。

優秀選手賞はJ1リーグ全18クラブの監督と選手による投票結果に基づいて選えらばれたもので、チームから選出された選手の多さは今季のチームの成果を物語っている。

ちなみに、2位の川崎からはMF家長昭博選手、MFマルシーニョ選手、DF山根視来選手ら6人が選ばれた。

ACL2023出場権

優勝したマリノスと2位になった川崎は、来季のACL(AFCチャンピオンズリーグ)への出場権を獲得した。天皇杯に優勝したヴァンフォーレ甲府とともに、本戦グループステージから出場する。マリノスは2年連続6度目の出場で、川崎は3年連続10回目の出場だ。

今年の大会ではマリノスは16強入り、川崎はグループステージ敗退だった。初参戦の甲府はJ2所属で、2部リーグのチームの出場は天皇杯を制しながらJ1からJ2に降格した2006年の東京ヴェルディ以来となる。

また、Jリーグ3位が対象のプレーオフの1枠については、決勝進出チームがいる場合には、来年2月の決勝の結果次第で出場チームが決まる。

今季のACL決勝には浦和レッズが進出しており、西地区とのホーム&アウェイでの決勝戦を制して優勝した場合は、浦和がプレーオフから出場することになる。

3位はサンフレッチェ広島とセレッソ大阪で終盤競り合っていたが、セレッソは10月以降の最後のリーグ戦5試合を3分け2敗と勝点を伸ばせず、勝点51の5位で終了。3位につけていた広島に届かなかった。

広島は、天皇杯決勝で甲府に延長PKの末に敗れたが、その翌週のルヴァンカップ決勝でセレッソに試合終了間際の得点で逆転勝ちして優勝。その後、残りのリーグ戦2試合を1分1敗で勝点を55として3位でシーズンを終えた。

ACLは来年から秋春制に本格的に移行。2023年8月に予選ラウンドが行われ、プレーオフは8月22日。

東地区のグループステージは9月19日から12月13日まで、決勝トーナメントは、東地区は2024年2月13日から行われ、決勝は5月11、18日に予定されている。本戦はホーム&アウェイの従来の方式で行われる予定だ。


取材・文:木ノ原句望