徳島市出身の女優山下リオさんが、徳島市で開かれた徳島国際映画祭で主演映画「あの空の向こうに」「あの空の向こうに~夏雲~」の舞台あいさつに出演した。慣れない自転車に乗って長距離を走りながら演技するなど、まさに体当たりで挑んだ撮影の苦労や作品の見どころ、13年目を迎えてますます飛躍が期待される役者としての今後の目標などを、徳島新聞のインタビューで語ってくれた。

 -今回主演した2作品はどんな映画か。
 鳴門市と兵庫県南あわじ市、香川県東かがわ市が連携して設定した「ASAサイクリングコース」の魅力を紹介しながら、登場人物が自転車を通して自分と向き合ったり、成長したりしていく過程を描いた映画です。
 第2弾の撮影時期は第1弾の撮影から1年ほど後だったので、私が演じた亜海と同じく私自身も成長しています。鳴門、南あわじ両市の美しい風景に加え、鳴ちゅるうどんや淡路島バーガーなどのグルメも登場します。

 -撮影で特に印象に残った場所は。
 鳴門市の四方見(よもみ)展望台の坂です。ものすごく風景が奇麗なんですけど、とにかく急勾配で。サイクリングのゴール地点で、ストーリー上も重要なポイントですが、体力との戦いだったのですごく印象に残っています。
 あとは、第2弾で訪れた南あわじ市の海沿いの堤防のところ。横が全部海だったんですが、そこを自転車で走りながら5㌔ぐらいずっと長回しで撮影しました。体力的にきつかったですが、海がとても美しかったです。

 -自転車のシーンは苦労したのでは。
 第1弾は自転車のシーンが多かったので、体力を使って特に苦労しましたね。靴をペダルにはめ込んでこぐんですが、私が下手だったのもあって靴が外れずに倒れちゃったことが何回もあって、ボロボロになりました。
 第2弾ではお芝居のパートが増えて、人間関係によりスポットライトが当たっていたので、少し楽になりました。四方見展望台の急な坂も、第2弾では私は自転車をこがなくてもよかったので、正直ほっとしました。

 -地元が舞台の作品に出演した感想は。
 徳島で撮影される映画の出演者の中に私の名前がないと「なんで?」って思っちゃうタイプなので、本当にうれしかったです。「徳島と言えば山下リオ」とすぐ名前が出るような存在になることを目標にしているので。
 第2弾で亜海が「また新しい夢を見つけた」と言っているので、第3弾があればもちろん出たいです。第2弾の津田寛治さんたちのように、第3弾でも新しい俳優さんが新しい風を吹かせてくれるか楽しみです。

 -地元の人にも見てもらいたいか。
 映画の中に知っている場所が登場するとすごく身近に感じられるなど、地元の方ならではの楽しみ方ができると思います。グルメも含めて私の知らないこともたくさん出てきたので、新しい発見があるかもしれません。
 私が呼ばれたからにはちゃんと阿波弁をしゃべっているので、徳島の空気を違和感なく感じていただけるはずです。ぜひ多くの徳島の方に見ていただきたいと思っています。

 -徳島国際映画祭出演は2年連続となる。
 徳島は映画館が少ないこともあって、映画があまり近い存在ではなかったですよね。こうやって映画祭を開くことで映画を見ていただくきっかけになるといいですし、私の作品がその一つになったらうれしいですね。
 徳島国際映画祭は地元の方が製作したり、出演したりしている作品を見られる身近さも魅力。舞台あいさつもアットホームで、皆さんが温かく迎えてくださるので私も気張らずに話せて、地元の温かさを実感します。

 -徳島で好きな場所や食べ物などは。
 山登りがすごく好きなので、お気に入りの上勝町の山犬嶽にはよく登ります。私の好きなコケが奇麗に生えたスポットがあって、大きな岩に登ると山の下を見渡せるんです。
 先日も真冬のすごく寒い日に母と2人でスープを持って登って、その岩の上で飲みました。そういうことにすごく幸せを感じて、またお仕事を頑張る力も湧いてくるんです。
 あとは徳島はやっぱりお魚がおいしいので、ついついグルメに走ってしまいますね。

 -デビュー13年目を迎えて、演技の幅が広がってきた。
 14歳でお仕事を始めて、少女の役から、大人の女性になっていくグラデーションの時期も含めて、それぞれの監督さんが求めるものに応えながらお仕事を続けてきて、出会った方々に成長させてもらった感じですね。
 恋愛ものやピュアな役しかできなくて悩んだ時期もありましたが、20歳の時にずっと伸ばしていた髪を切ったことが転機になって、殺人者の役やバラエティー番組のアシスタントMCも務めさせていただきました。

 -仕事を通して人間的にも成長できたと。
 「大人になったな」と思っても、数年後に「あの時は子どもだったな」と思う繰り返しで、今後もそれは続くんでしょうね。その時々に精いっぱいやった作品が積み重なって今があるのがすごく幸せで、感謝しています。
 13年は長いようで、80歳まで生きると考えたらほんのちょっと。それでこれだけのことを感じるんだから、自分がこの先どうなっていくのかすごく楽しみです。その時にもやっぱり、この仕事をしてたいと思いますね。

 -この先、どんな女優になりたいか。
 23歳の時に大先輩の草笛光子さんに初めてお会いして、体が震えたんです。お芝居の姿勢も、待ち時間の何気ない会話の中でも、なんて魅力的で面白い人なんだと衝撃的を受けて、本当に草笛さんが光って見えました。
 年齢を重ねていくうちに、その人の内面ってすごく出るんだなということを実感して、単に役者としてではなく、人間としてこうなりたいと初めて思いました。そういうすてきなキャリアの重ね方をしていきたいですね。