さまざまな表情の羅漢像が並ぶ五百羅漢=板野町の地蔵寺

 四国八十八カ所霊場第5番札所・地蔵寺(板野町羅漢)には、本堂の横からさらに奥へ続く参道がある。つぼみがほころび始めた梅の並木道を進み、石段を上りつめれば、目の前に大きなお堂が現れる。

 奥の院「五百羅漢」で、仏教の世界で「究極の悟りを得、尊敬される人物」を指す阿羅漢を模した像が置かれている。五百という数字は、仏教の始祖・釈迦(しゃか)の死後、仏典編さんのために集まった弟子(阿羅漢)の数から来ており、中国や日本の各地で崇拝されている。

 お堂は1775年に創建され、「羅漢さん」と呼ばれ親しまれていたが、1915年に火災に遭って焼失した。22年に再建され、職人らによって羅漢像も作られていたが、戦争で中断した。寺によると、現在あるのはおよそ200体という。

 お堂の中は薄暗く、ほのかな明かりに照らされた空間に、ぎっしりと羅漢像が並ぶ。少し不気味に感じるかもしれないが、さまざまなポーズ、表情の像は「亡き人に似るものがある」そうだ。

 静寂の中で眺めていると、時間がたつのを忘れる。お堂を出た時に、なぜか気分が安らいでいることに気付くだろう。