アナフィラキシー症状を緩和する自己注射薬「エピペン」

 アナフィラキシー症状(重篤な急性アレルギー)の緩和に有効なアドレナリン自己注射薬「エピペン」を所持する小中学生が徳島県内で年々増えている。県教委によると、昨年5月時点で163人と2014年の2・6倍になった。学校では発症に備えて教員研修を行うなど対策の徹底を図っている。 

 県教委体育学校安全課によると、エピペン所持者は14年度の62人から年20~30人のペースで増えている。食物アレルギーのある児童生徒は14年度が2940人、18年度が3048人と微増だが、エピペン所持者の割合は2・1%から5・3%になった。使用件数は年によってばらつきがあり、14年度は0件、18年度は12月10日時点で6件となっている。

 所持者が増えた理由について、田山チャイルドクリニック(徳島市北矢三町3)の田山正伸院長は「食物アレルギーのある子どもは全国で増加傾向にあり、それに伴ってアレルギーに関するニュースや話題に触れる機会も増えてエピペンの認知度が高まっている」と話す。

 エピペンは11年に保険診療が適用された。12年には東京都調布市の小学校で給食を食べた5年女児がアナフィラキシー症状で亡くなり、エピペンの存在が知られる契機になったという。

 エピペンは原則として患者本人が使用するが、重篤な症状に陥った際は教師らが代わりに投与できる。県教委は16年度に「学校におけるアレルギー疾患対応ハンドブック」を作り、養護教諭を対象に研修などを定期的に開催。各校でも保護者との面談や職員会などで情報共有し、対応できるよう備えている。

 アナフィラキシー症状は食品アレルギーだけでなく、昆虫や化学物質に触れた時なども発症する恐れがある。体育学校安全課は「学校ではエピペン所持者でなくても症状が起こり得るとの認識を徹底し、緊急時の対応に万全を期したい」としている。

 エピペン 国内で唯一承認されているアドレナリン自己注射薬。ペン形の容器に薬剤が内蔵され、安全キャップを外して太ももに強く押し当てると針が出て薬剤が投与される。食物アレルギーなどによるアナフィラキシー症状が出たときに使い、医師の治療を受けるまでの間、症状の一時的な緩和を図る。