リオデジャネイロ五輪レスリング女子58キロ級金メダルで五輪4連覇を果たし、青森県出身者初の国民栄誉賞受賞が決まった伊調馨選手(32)=八戸市出身=は2016年9月13日、都内のホテルで記者会見し、「自分自身の中では信じられない気持ちが大きいが、関係者の皆さんへの感謝でいっぱいです」と晴れやかな表情で喜びを語った。

 同日午前の閣議での正式決定を受け、会見に臨んだ伊調選手は「今後自分の人生をこれまで以上に考えなくてはならない。身の引き締まる思い」と心境を述べ、今まで以上に後進の指導やレスリングの普及に当たっていく意欲を示した。

 「誰に一番受賞を伝えたいか」と問われると、「(亡くなった)母に伝えたい気持ちもあるが、母は『生きている人間に感謝しろ』と言いそうなので、支えてくださった方々に」とコメント。24日には八戸市で祝賀パレードが予定されており、「金メダルをたくさんの人に見せたい。早く帰りたい」と笑顔を見せた。

 会見では副賞として贈られる記念品の希望を問われて「日本人女性として、お着物や和装の文化を伝えたいという気持ちもあるので、おねだりできたらいいな」と語り、笑いを誘う場面も。今回の受賞を「自分の中では通過点」としつつ、4年後の東京五輪については「挑戦してみたい気持ちになる時はもちろんあるが、けがの状態もあるし、いろいろな選択肢の中で決められたら。もう少し時間をかけて考える」と述べた。

 国民栄誉賞の受賞は、レスリング界では2012年受賞の吉田沙保里選手(33)に続いて2人目。菅義偉官房長官は13日、五輪史上初の女子個人種目4連覇の偉業を挙げ、「多くの国民に深い感動と勇気、社会に明るい希望を与えた」と受賞理由を説明した。

【一問一答】

―受賞を誰に伝えたい?

 「母(2年前に亡くなったトシさん)に伝えたい気持ちもあるが、母はきっと『死んだ人間にではなく、生きている人間に感謝しろ』って言うでしょう。支えてくださった関係者や、練習でお世話になった警視庁の皆さまに伝えたい」

―リオ五輪では八戸時代に指導を受けた澤内和興コーチから「平常心」と書かれたハンカチを贈られた。
 「私は五輪に向けて気持ちが高ぶっていて、勝ちにこだわらなければいけないと自分に言い聞かせていた時期だったので、『平常心』という言葉を見て冷静になれた。その言葉がなかったら、自分自身を見失っていたかもしれない。自分に一番必要な言葉だった」

 ―あらためて、伊調さんにとってレスリングとは。
 「私自身をつくってくれたもの。物心つく前から始めて、出会った人々から楽しさ、やりがい、難しさも含めて競技の全てを教わった。レスリングがなかったら私はここまで人生を懸けて何かに臨むことはできなかった」