スペシャルインタビュー

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【眞鍋かをりさん】「寄付」も一つのボランティア。途上国が身近な存在に

掲載日:2023.12.25

ボランティアには様々なスタイルや参加方法があります。自分が出向いて活動するのは、少しハードルが高いと感じる人がいるかもしれません。タレントの眞鍋かをりさんは、継続的な「寄付」という形で、ジンバブエの女の子と交流を続けています。

眞鍋さんが考える支援のあり方、ご自身の中で生まれた変化などにはどういうものがあるのでしょうか。伺いました。

毎月の寄付を通じてジンバブエの女の子と交流

―― 寄付を通じてジンバブエの女の子と交流している活動について、具体的に教えてください。

国際NGOのプラン・インターナショナルが行っている「プラン・スポンサーシップ」という支援活動で、2014年から毎月5千円を寄付させていただいています。お金は途上国の問題を解決して子どもを支援する活動にあてられます。

おもしろいのは、支援対象の地域に住む子どもと1対1で交流できることです。その子に直接寄付が届くわけではないですが、お手紙のやり取りなどを通じて、女の子の成長を見守ることができます。団体からも活動報告が届き、自分の支援が目に見える形になるので、それがずっと続けられているポイントなのかなと思います。

―― 寄付を始めたきっかけは?

20代は芸能界でやっていくのに必死で、他の人のことを考える余裕はありませんでした。

30代になって仕事に自信が持てるようになり自分を見つめ直してみると、みなさんのおかげでキャリアを積み重ねることができたことに気づきました。いただいてきたものを誰かに還元しないとバチが当たると感じていた時に、たまたまプランさんの広告を見たのがきっかけです。

――いろんな支援の形がある中で、子どもとの交流がある「スポンサーシップ」を選んだ理由は何ですか。

気軽に始められると思ったことが大きかったです。私自身も明日どうなっているかわからない職業ですし、その子の人生を支え続けられるのだろうかと最初は不安だったのですが、実際はそこまでの責任を感じる必要はありませんでした。毎月寄付をすることによって、一人の人間の成長を見守ることができる、そのプラスアルファがあるからこそ、続けていこうと思えます。続けてよかったという実感が得られる素晴らしい取り組みだなと思っています。

――交流している女の子はどういう子ですか。

団体の方から、「この子になりましたよ」と彼女を紹介されました。当時はジンバブエがどこにあるかもわからず、地図で調べました。
実際に会ったことはないんですけど、彼女のお母さんによると、シャイだけど元気で活発な女の子です。2014年当時は6歳でしたが、今はかなり大人になりました。制服を着て、すらっとした姿の写真が先日送られてきました。手紙も最初の頃はお母さんの代筆だったのが、自分の言葉でしっかり書いてくれるようになりました。自分の中では月日の流れはあっという間ですが、一人の人間が成長し、自分がその一助を担えたかもしれないと思うと感慨深いです。

――手紙でどういうやり取りをしているのですか。

「元気でいてください」というような、ありふれた内容ですけど、彼女がちゃんと学校に行けて病気をしていないことが、私にとっては何よりの報告です。私に子どもが生まれたことを手紙にした時には、「いつかお子さんにも会ってみたいです」とお返事をもらいました。
手紙は日本語で書いています。彼女からの手紙も、現地の言葉で書かれたものが、団体の方によって英語に翻訳され、さらに日本語に翻訳されているので、問題なくやりとりができています。

――実際に支援をしてみてよかったと思うことを教えてください。

彼女の住む村では近くで水が手に入らなかったそうですが、寄付によりシステムが整い、時間をかけて歩いて水をくみに行く必要がなくなったことを団体から教えていただき、うれしく思いました。活動成果の報告に加え、支援している子ども一人ひとりの成長が見られるというのは子育てと同じような実感があります。

人間の成長を見守る喜び

――寄付を始めた翌年に出産されました。ご自身の子育てと重なる部分もありますか。

自分が子育てをしてみると、生まれた場所による不平等のようなものを感じます。国内もそうですし、世界に目を向けてみると、自分たちはすごく恵まれているなという感じです。ありがたくもあるし、申し訳ない気持ちにもなりますね。

――お子さんと支援に関する話をすることはありますか。

娘にも折に触れて手紙や写真を見せながら話しています。
小学校に上がる前は支援のことをまだ理解できないようで、他の子どもを育てているのかとヤキモチをやいていました。
最近はなんとなくわかってきていて、ゲームソフト1本を買えるお金を寄付したらジンバブエの子どもが学校に行けるんだよという話をしたところ、娘も理解しているようでした。
世界地図を浴室に貼って、お風呂に入りながら一緒にジンバブエを探したりもしています。

――支援を続けていてご自身の気持ちなどにどんな変化がありましたか。

恵まれた状況を当たり前だと思ったらいけないと思えるようになりました。
最初のころは、こちらが何かをしてあげているという意識がありました。でも寄付を続けるうちに、成長していく姿を見られたり、喜びを感じられたりするようになり、自分が受けるメリットの方が大きいと感じるようになりました。寄付をしてあげているのではなく、寄付させていただいているという感覚です。

子育ても同じで、子どもを育てさせていただいている、という気持ちです。苦行のように感じる時もあるけど、自分一人だけでは感じられない喜びを子どもからたくさんもらっています。子育ても支援も、一人の人間が健やかに成長していく姿を見られることが一番の喜びです。

――寄付という形で途上国の課題を解決することの意義をどのようにお考えですか。

自分で現地に行ってボランティア活動をすることは素晴らしいことです。ただ、みんなそれぞれの生活があり、誰もができることではありません。スキルがないと、できることも限られてしまいます。現地ではプロフェッショナルの方々が頑張ってくださっていますから、そこに寄付をして活動を支えることは、私たちが一番参加しやすく、しかも効果が高い方法だと思います。どんな活動をするにしても、予算は必ず必要なはずなので。

「自分はお金を出しているだけじゃないか」と思うこともありました。でも、これは自分が最大限できることですし、こういった形で助かる人がたくさんいるのであれば、ベストな社会貢献の形の一つなのかなと感じています。

いつストップしてもいい まずは気軽に

――他にしている寄付や、支援活動を選ぶポイントを教えてください。

特定非営利活動法人 国境なき医師団日本への寄付も続けていて、パレスチナ問題などのニュースを見るたびに意義がある支援だと感じています。直接の寄付ではないですが、フェアトレードの衣類などを購入するようにもしています。

旅行で訪れた海外では、お金がきちんと使われているのか疑問に思うような劣悪な環境の孤児院があったり、子どもへの不可解な支援を持ちかけられたりすることもありました。寄付をする団体は、必要とする人たちにきちんと支援が回っていて、お金の使われ方が不透明でないことが大事。実績や評判なども調べて、きちんとした団体を選びたいと考えています。

――これからチャレンジしたいボランティアや支援活動はありますか。

娘がもう少し大きくなったら、いつか一緒に現地で何かをしてみたいです。私自身が子ども時代に海外に出たことがない子どもだったので、色々な経験をしてほしいと思っています。

――ボランティアや寄付をしてみたいと考えている人にアドバイスをお願いします。

ボランティアは、自分が苦しい思いをしたり嫌になったりしてまで続ける必要はないと思っています。いつストップしていいんです。私も続けられるのか最初は不安もありました。でもいざ始めてみると、自分にも気づきや学びがあり、人の人生を見せてもらえるという喜びもあることが分かりました。それでも、本当にやめたいなと思ったら、そのタイミングで寄付を中止することもできます。まずは気軽に始めてもらえればいいのかなと思います。

興味を持った時点で支援はもう始まっていますよ。