菅首相長男ゆえの「忖度」疑惑晴れず、総務省は意図的見逃しか 東北新社の外資規制違反問題

2021年3月16日 06時00分
 参院予算委員会にNTTと東北新社の経営トップが参考人招致された15日の集中審議。当事者は許認可など事業への影響を一様に否定したが、政治・行政への信頼回復には程遠い。中でも東北新社の外資規制違反問題は、総務省が意図的に見逃した疑惑も浮上し、菅義偉首相の長男菅正剛せいごう氏の勤務先ゆえに忖度そんたくが働いていたという見方はくすぶる。(山口哲人、川田篤志)

参院予算委に参考人として出席し、答弁のため挙手する東北新社の中島信也社長。左はNTTの澤田純社長=15日午前、国会で(小平哲章撮影)

◆首相長男、接待の半数に同席 透ける威光

 「顔つなぎ。(東北新社内の調査で)目的までは追及しなかったが、顔つなぎは顔つなぎかなと」
 東北新社の中島信也社長は、総務省幹部らの接待を39回も重ねた目的を問われ、許認可にかかわる働き掛けなどはなかったと主張した。
 正剛氏は接待の半数以上に同席している。中島社長は「優秀な若者。接待要員ではない。接待で正剛氏が一定の役割を担ったとは考えていない」と説明したものの、東北新社側が総務省になお影響力がある首相の「威光」を利用しようとしたとの見方は根強い。
 「子息が座っているだけで、役人は気になり、忖度する」。立憲民主党の福山哲郎幹事長がこう指摘したのに対し、首相は「レッテル(貼り)のようなことはやめてほしい」と反論したが、接待に参加していない中島社長は正剛氏の具体的な役割については言葉を濁し、忖度の疑念は解消されなかった。
 東北新社の外資規制違反が放置され続けてきたことと、正剛氏の存在や一連の接待攻勢の関係も注目点だ。中島社長は衛星放送事業の承継を検討していた2017年8月に違反状態だと気付き、総務省に報告したと明言したが、現在の担当局長は全面否定。武田良太総務相は週内に立ち上げる検証委員会に委ねる考えを示すにとどめた。

◆「携帯料金値下げ」「ドコモ子会社化」重なるNTTの接待

 NTTの接待は、経営上の焦点だった携帯電話料金の値下げやNTTドコモの完全子会社化の検討・発表時期と近接しており、野党は便宜供与などの働き掛けがなかったかを追及した。
 官房長官だった首相が携帯電話料金について「4割程度下げる余地がある」と発言し、波紋を広げたのは18年8月。これを受け、総務省が有識者会議を発足させるのに先立ち、澤田純社長らは9月に2回、担当局長だった谷脇康彦前総務審議官を接待している。昨年9月にドコモの完全子会社化を発表する前の6、7月には、谷脇氏や総務審議官だった山田真貴子前内閣広報官をもてなしている。
 谷脇氏は国会で、接待の際に携帯電話料金の話題が出たことを認めているが、澤田社長は携帯電話料金値下げの踏み込んだ話題はなかったと強調。ドコモの経営統合に関しては金融商品取引法で禁止されている「インサイダー情報そのもの」と言及を否定した。
 共産党の山添拓氏は重大局面と接待が重なった背景をこう指摘した。「料金値下げを看板政策に掲げる首相と、グループ再編により値下げの原資を確保したいNTTの思惑が一致した」

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