10年たっても余震? 首都圏でなぜ停電? 福島県沖地震で浮かんだ疑問

2021年2月16日 06時00分

道路脇ののり面の土砂が崩れ、道路をふさいだ福島県相馬市の常磐自動車道=14日午前、福島県相馬市で、本社ヘリ「おおづる」から(隈崎稔樹撮影)

 福島県沖で13日に起きたマグニチュード(M)7・3の地震は東日本大震災の余震だった。今回の揺れの特徴や10年たっても余震が起きる仕組み、関東地方でも大規模停電が発生した原因を探った。(永井理、小野沢健太、芦原千晶)

◆東日本大震災の余震いつまで?

 大地震が発生すると断層が広範囲で大きく動き、周りの岩盤がひずみ、力がかかる。「その力を解消するため周辺で次々に余震が起こる」(気象庁地震津波監視課)。震源域から100キロ以上も離れた断層が影響を受けて地震を起こすこともある。どこまでを余震と呼ぶかの基準はない。気象庁は東日本大震災の場合、関東―東北沖に震源を囲む四角形の区域を設け、その中で起きた地震を余震としている。13日の地震も範囲内だった。
 余震発生数をみれば、最初の地震の影響がどれぐらい残っているかが分かる。気象庁によるとM4以上の余震数は、一昨年3月11日からの1年間で175回。大震災直後の30分の1以下に減ったが、発生前に比べてまだ2~3割ほど高いとみられている。
 余震は、おおまかに時間に反比例して減るとされる。その通りなら、あと10年たって今の半分程度。政府の地震調査委員会の平田なおし委員長は「過去のM9前後の地震の例からも10年、20年と余震が続くことがよく知られている」と指摘する。
 2004年のスマトラ沖地震も、10年以上たってから震源周辺でM7前後の地震が何度も起きた。東北の太平洋沖は元々M7級の地震が起きてきた。これからも注意が必要だ。

◆大規模停電 東京はなぜ免れた?

 今回の地震では東京都を除く首都圏や静岡、山梨両県で最大約86万戸が停電した。首都圏の停電は、東日本大震災後では2番目の規模だった。
 送配電を担う東京電力パワーグリッドの広報担当者によると、理由はこうだ。地震直後、首都圏に送電していた、東京電力と中部電力が共同出資したJERAの広野火力発電所5、6号機(福島県広野町)など3基が自動停止した。
 総出力180万キロワットの電力の供給が止まったのに需要をそのままにしておくと過剰な負荷がかかり、発電設備が壊れる恐れがある。そのため「設備を保護する仕組みが自動的に作動し、一部地域の送電を止めた」。
 東京への送電が維持されたのは「人口密度や経済、交通インフラなど社会機能への影響を総合的に考慮した」からだという。
 停電は約3時間で復旧した。東京湾周辺の火力発電所が無事で、電柱や送電線の損傷もほとんどなかったためだ。電力需要が比較的小さい深夜だったこともあり、他地域から電力を融通してもらう必要もなかった。一方、東北地方では主力となる9基の火力発電所が停止。こちらは発電所の設備不具合や断線が重なり、停電の復旧は14日午前9時。北海道や中部から電力の融通を受け、供給不足を補った。

◆家屋倒壊がなかったのはなぜ?

 13日深夜の福島県沖の地震は、M7・3と規模は大きく、最大震度6強を観測するなど強い揺れに見舞われたが、死者は出ず、倒壊した家屋はなかった。名古屋大減災連携研究センター長の福和伸夫教授(地震工学)は、被害が比較的抑えられた理由に、一般の建物被害が出やすい1秒前後の周期の揺れが少なかったことや、震源が深く、陸地からも離れていたことを挙げる。
 一般に地震動には、周期が1秒に満たない短周期の揺れから、2秒を超す長周期のゆったりとした揺れまで、さまざまな周期の揺れが混じっている。
 2秒を超す揺れは高層の建物、1秒前後の揺れが木造家屋や低層のビルなどに被害を与える傾向にある。1秒に満たない揺れによる被害は、ブロック塀や墓石などにとどまりやすいという。
 福和教授は「今回は長めの周期の揺れはあったものの、被災地に高層の建物が少なかったため被害が出なかった。また、1秒よりも短い周期の揺れが多く、建物の被害が小さかったほか、耐震性が弱い建物が、10年前の東日本大震災の強い揺れで壊れ、数が少なかったことも被害が少なく済んだ一因だ」と説明する。
 被害の大小には、震源の場所も関わる。今回は震源の深さが55キロもあったため、海底があまり上昇せず、津波はほとんど起きなかった。M7・3は、1995年の阪神大震災や2016年の熊本地震と同じだが、両地震のような直下型ではなく、震源も離れていたため、建物の被害は少なかったという。

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