バイデン新政権の閣僚は女性が5割 先住民やLGBTの初入閣で多様性をアピール 承認手続きは大幅に遅れる

2021年1月21日 06時00分
 【ワシントン=金杉貴雄】20日に発足するバイデン新政権は、閣僚全25人のうち女性が約5割、非白人の人種的少数派(マイノリティー)も多数の歴史的な陣容となる。深い分断に苦しむ中で、多様性の力で山積する課題の克服に挑もうとしている。

◆男女比ほぼ同数は画期的

 「すべての人々を代表する最も多様な閣僚たちを見るだろう」。バイデン氏は昨年12月、新政権の人選についてそう語った。
 指名された閣僚はハリス副大統領を含め計25人(閣僚級ポストも含む)。このうち女性は12人で48%に上る。米メディアによると共和党トランプ政権(発足時)は16%、民主党オバマ政権(同)でも32%にとどまっていた。米国で女性が参政権を得て約100年で、政権の男女比がほぼ同じの画期的政権となる。

◆アジア系などマイノリティーは過半数の13人

 それだけではない。マイノリティーは過半数の13人。白人男性が8割を占めたトランプ政権から大きく転換する。黒人や中南米系、アジア系だけでなく、内務長官のハーランド氏は先住民で初、運輸長官のブティジェッジ氏は性的少数者(LGBT)公言で初の閣僚となる。
 バイデン氏が女性やマイノリティーを数多く登用したのは、国民の融和を訴えているからだけではない。米国が直面する多くの課題が、従来通りの路線と発想ではもはや対処困難だと自覚しているからだ。
 最優先の課題は、世界最悪の被害となっている新型コロナウイルス対応と経済回復だ。新型コロナは米社会で広がり続けてきた経済・人種の格差を直撃し、さらに拡大させている。

◆新政権の目玉政策は「クリーンエネルギー」

 女性初の財務長官となるイエレン氏は「歴史的危機で最も脆弱な人たちが不釣り合いに打撃を受けている」と主張。富裕層への増税と再配分、機動的な財政出動で、初の中南米系厚生長官となるベセラ氏らと格差是正に取り組む考えだ。
 さらに新政権の目玉政策が、温暖化対応で世界をリードし国内雇用の創出をうたう「グリーンエネルギー革命」だ。化石燃料大国の米国を変えるのは容易ではないが、ハーランド氏やブティジェッジ氏らは再生可能エネルギー拡大や二酸化炭素排出抑制に決意を示す。

◆トランプ氏の弾劾裁判で承認手続きに遅れも

 だが、新政権の船出は不安要素に包まれている。1つは閣僚の承認手続きが大幅に遅れていることだ。
 通常は前年12月から1月半ばまでに公聴会を行い、政権初日に承認を得ることが多いが、今回はトランプ氏が敗北を最後まで認めず19日まで公聴会が行われなかった。トランプ氏の弾劾裁判が上院で始まれば、さらに遅れて政策遂行に支障が出る恐れがある。

◆サンダース上院議員が入閣せず、民主党左派に不満

 もう1つは「身内」の民主党左派の不満だ。バイデン氏は左派寄りの閣僚も指名したが、サンダース上院議員らは入閣させなかった。中枢には国務長官のブリンケン氏や首席補佐官のクレイン氏らオバマ政権当時の旧知の経験者を据えた。
 こうした中道派閣僚はハーバード大ロースクール出身などのエスタブリッシュメント(既得権益層)とみられ、左派に不満がくすぶる。トランプ氏と同様、左派はアフガニスタンなどの米軍撤退を求める「不介入」主義で、状況次第で関与は必要とする中道派と不協和音が出かねない。

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