<米大統領選>世論調査と実態のズレ再び 共和党支持者の回答拒否が拡大? 背景にメディア不信との見方

2020年12月21日 05時50分
 【ワシントン=金杉貴雄】米大統領選は事前の世論調査の通り、民主党のバイデン次期大統領の勝利が確定した。しかし、共和党のトランプ大統領との差は予想より小さく、4年前の前回選挙で大きく外れた調査精度の課題は残ったまま。世論調査と選挙結果が食い違う背景には、ひそかにトランプ氏を支持する「隠れトランプ」の存在だけでなく、共和党支持者にメディア不信が広がっていることが指摘されている。
 政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティクス」によると、大統領選の世論調査でバイデン氏は共和党のトランプ大統領に、全米平均で4~10ポイントで一貫してリードし、投票日直前でも7ポイント差あった。結果はバイデン氏が全米の総得票で4.5ポイント差で上回ったが、世論調査よりは接戦だった。
 しかも大統領選の勝敗は全米の総得票ではなく、各州ごとの結果で決まる。前回選挙では、民主党ヒラリー・クリントン氏はトランプ氏を総得票で2.1ポイント上回ったが、ペンシルベニア州など「ラストベルト(さびついた工業地帯)」と呼ばれる激戦州を落とし敗北。各世論調査はこうした激戦州でも「ヒラリー氏リード」と伝えていたが、結果的に大きく外れた。

◆「隠れトランプ現象」だけじゃない

 各世論調査会社は、表立っては答えにくいものの実際にはトランプ氏を支持する「隠れトランプ」がいたと分析。同氏への支持が多い白人労働者層の調査を増やすなど改善を試みた。この結果、ラストベルトの激戦州3州では誤差が縮小し、バイデン氏勝利の予想は当たった。
 だが、誤差が大きいままの州もあった。南部フロリダ州では誤差がむしろ拡大。中西部オハイオ州もほぼ互角のはずがトランプ氏が8ポイント差をつけて勝利した。
 大統領選と同時に行われた連邦上下院選でも、民主党が議席を伸ばすと予想されていたが、ふたを開ければ下院は議席を減らし上院も伸び悩んだ。民主党新人が優勢とされた東部メーン州の上院選は、逆に共和党現職の圧勝だった。
 このため「隠れトランプ」現象にとどまらず、共和党支持者が調査に答えない傾向が広がっているとの見方が出ている。米紙ニューヨーク・タイムズは、トランプ氏が4年間メディアを「フェイクニュース」「国民の敵」などと攻撃し続けたことで同党支持者のメディア不信が強まり調査に答えなくなっている可能性があり、問題はより深刻になっていると分析している。

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