平均(アベレージ)でも、人気絶大 「あ、安部礼司〜BEYOND THE AVERAGE〜」 TOKYO FMで15年目

2020年12月5日 07時24分

2月、公開生ラジオドラマに臨む小林タカ鹿(中央)ら=横浜市で(TOKYO FM提供)

 ごくごく平均的(アベレージ)なサラリーマンなのに絶大な支持を集める。その人の名は安部礼司(あべれいじ)、49歳。TOKYO FMのラジオドラマ「あ、安部礼司〜BEYOND THE AVERAGE〜」(日曜午後5時)の主人公だ。放送開始から15年目の現在も好調を維持、ラジオの可能性を示している。 (鈴木学)
 「『ラジオドラマを初めて聴いて泣きました』というメールが今も結構来る。(番組関連の)イベントには二万人、三万人が来てくれるけど、伸びしろは大きいと思う」。勝島康一・総合演出(59)=写真=は語る。
 番組は、東京・神田神保町の架空の会社「大日本ジェネラル」を舞台に、お人よしで優柔不断だが、周囲から慕われている安部礼司が、トレンドの波にもまれながらも前向きに生きる姿をコメディータッチで描く。
 「半沢直樹」「リモートワーク」など、はやりや世相を織り込み、音楽は団塊ジュニアの安部世代が聴いてきた一九八〇年代、九〇年代の歌謡曲などを流す。二〇〇六年四月の開始から数カ月後、安部の恋愛を取り入れた回から反応が上向いた。〇九年、都内のホールで開いた安部の「結婚イベント」はチケットが完売し、「あれから認知度が高まっていった」と勝島総合演出は振り返る。
 人気を支える一因に「共感」があると、安部礼司の声を担当する俳優小林タカ鹿(しか)(45)はみる。
 安部らがぶつかる壁も悩みも身近にありそうで、「リスナーそれぞれが『安部も頑張っているんだな』と感じてもらえているのではないでしょうか」。実在の喫茶店などを登場させるのも、リアル感の演出に役立っているようだ。
 日本のラジオドラマは、一九二五年のラジオ放送開始直後から始まったといわれる。「君の名は」(NHK)などの大ヒット作も生まれ、テレビの普及まで重要なコンテンツだった。
 ラジオコラムニストやきそばかおる(45)によると、今もNHKだけでなく、民放も在京、地方局で制作しているが、手間や費用面などに問題もあり、数は多くない状況。そんな中で「安部礼司」は、市場調査を基にターゲット層に刺さる番組をつくり、親の影響で聴き始めた子どもらも取り込み、幅広くファンを獲得したのでは、とみている。
 「映像は氾濫していて目は疲れているが、耳はまだ空いている。『安部礼司』は、ラジオドラマが今の時代にもヒットすることを示した。スマホがあればラジオが聴ける今、さらにファンを広げる可能性も秘めている」と話す。
 開始時に三十四歳だった安部礼司は来年五十歳。小林は「ミスや物忘れが増えて、だんだん安部礼司に浸食されてきている」と笑う。番組はいつまで? 定年まで勤め上げる? 「三十年続くラジオドラマなんてなかなかないから、続けられるといいね」と勝島総合演出。「日曜の夕方、『聴かなきゃ』と思ってもらえる、生活の一部になる番組づくりを続けていきたい」

◆あすオンラインイベント

 番組では6日にイベントを開く。今回はオンライン開催、題して「ABE Tube」。安部礼司や妻の優、「−っす」という話し方の後輩、飯野平太(いいのへいた)、「大バカモン」が口癖の本部長、大場嘉門(おおばかもん)ら主要キャストに加え、シンガー・ソングライターの辛島美登里らがゲスト出演。午後4時からオンライン男子会、5時から女子会、6時から生ラジオドラマ中継の3部構成。5時からの通常放送もある。
 これまで日産グローバル本社ギャラリー(横浜市)や東京・日本武道館などでイベントを開催してきた。今年2月の「安部四輪」にも2万人以上が来場した。

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