「同一労働同一賃金」どうなる?非正規労働者に関する訴訟判決Q&A

2020年10月14日 05時50分
 非正規労働者にボーナスや退職金の支給を認めない判断を示した2件の訴訟の判決は、働き手の賃金を決めようとする今後の企業の判断に影響を与えそうです。正規・非正規の賃金の差はどうなるのでしょうか。(渥美龍太)
Q 今回の裁判が注目されたのはなぜですか。
A 同じ仕事の内容なら同じ賃金を支払う「同一労働同一賃金」という考え方を政府が進めてきたことが背景にあります。政府は一昨年、この考え方を反映させる一連の法改正を行いました。こうした中で今回、非正規労働者にボーナスや退職金が支払われなかったことの是非が争われ、注目度が高まりました。
Q 同一労働同一賃金なら正規、非正規に関係なく、ボーナスや退職金を支払うべきではありませんか。
A 判決は働き方の違いによる「合理的」な差を認める内容でした。仕事内容の違い、課せられた責任の重さ、頻繁な配置転換の有無など状況によっては、格差が生じることもあり得るとの考え方をあらためて示した形です。
Q そうなると、正規と非正規の格差は固定化されてしまうのですか。
A そこは見通せません。判決は今回のケースについてはボーナスと退職金の不支給は「不合理とまでは言えない」としましたが「不合理と認められる場合はある」とし、別のケースでは判断が異なることがあり得るとも指摘しました。
 政府は同一労働同一賃金の考え方に基づき、企業が手当などを支払う際の参考にしてもらうガイドラインを公表していますが、あいまいな点が多いとの批判もあります。今後は判例の積み重ねによって、合理的か不合理かの基準が定まることになりそうです。
Q これから働く人の賃金はどうなりそうですか。
A 同一労働同一賃金は今年4月から大企業への適用が始まりました。ただ「守られていない」(労組関係者)との声が後を絶ちません。来年4月からは中小企業にも適用されますが、中小の多くはコロナ禍で経営が悪化しています。非正規労働者を取り巻く環境が一段と厳しくなる恐れがあります。

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