コロナ禍で増える生活保護申請 きちんと知って必要な時に利用

2020年7月30日 07時38分
 新型コロナウイルスの影響で失業や収入減となり、生活保護の申請者が増えている。「最後のセーフティーネット」と言われるが、受給に対する後ろめたさや、バッシングへの恐れなどから申請をためらう人も少なくない。どういった制度なのかを理解し、いざというときに備えたい。 (植木創太)
 −どんな制度なの?
 資産や年金も含め、あらゆる収入を合わせても国の基準で計算された「最低生活費」に満たない生活困窮者に、その差額を支給します。憲法二五条の「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する制度。生活保護法で定められています。
 −支給内容は?
 生活費(生活扶助)や家賃(住宅扶助)、医療費(医療扶助)など八種類=表参照=あり、各扶助ごとに基準額や上限額が決まっています。世帯単位で、生活保護を申請すると、自治体が八種類の中から必要なものを支給します。財源は国が四分の三、自治体が四分の一。生活扶助の基準額は世帯構成で異なり、夫婦と幼児一人の三人世帯で約十三万〜十六万円、高齢者の単身世帯で約七万〜八万円。国民年金や介護保険などの社会保険料の支払いも実質免除されます。
 −利用するには?
 原則、世帯主が居住する自治体の福祉事務所に申請する必要があります。血縁や婚姻関係がなくても同居して同じ家計で生活していれば、対象になります。ネットカフェや野宿などで暮らし、定住していない人はどの自治体でも可能です。
 −申請からどのくらいで受給できるの?
 決定までの期間は原則、申請から十四日以内。その間に自治体が、申請者の預貯金や不動産などの資産を調べます。調査に時間がかかり、期間が三十日まで延びることがあります。
 −収入のある親族がいても受給できるの?
 申請時、親族に自治体から「金銭的援助をできないか」と問い合わせる場合があります。援助するかは親族の自由。援助が受けられない場合や援助があっても基準に満たない場合は、保護の対象になります。
 −家や車を持っていたり、借金や税金の滞納があっても利用できるの?
 車や家があることを理由に生活保護を受けられないことはありませんが、資産価値があり、現金化できる場合などは売却を求められます。借金や税金滞納があっても利用できますが、生活保護費を借金の返済に利用することはできません。
 −受給期間は?
 基本的に、継続して収入が基準を上回るようになるまで。受給中は、世帯全員の収入を毎月申告する義務があり、訪問調査も定期的に実施されます。
 −どのくらいの人が利用しているの?
 厚生労働省によると、四月現在、約百六十三万世帯(約二百五万人)が受給。本年度の予算は国と地方合わせ計三兆八千億円に上ります。四月の生活保護の申請は約二万一千五百件で、前年同月より約25%増。伸び率は現在の集計方法で比較のできる二〇一三年以来最大で新型コロナの影響で雇い止めに遭ったり、失業したりした人の申請が増えているとみられ、今後も増える可能性があります。
 −以前から不正受給が問題視されている。
 厚労省によると、一八年度に発覚した不正受給は約三万七千二百件で、総額約百四十億円。全体の支給総額の約0・4%で、収入の無申告や過小申告が六割を占めます。一四年施行の改正生活保護法で、福祉事務所の権限が強化され、より詳しく収入や資産の状況を調べられるようになりました。返還金にペナルティーを上乗せする制度も導入。罰金の上限も三十万円から百万円に引き上げられ、不正を見逃さない仕組みづくりに力を注いでいます。

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