ようこそ!マイホームタウン 木の実ナナ × 池ノ上

2018年10月24日 09時00分

今月の街先案内人

今回のゲストは女優の木の実ナナさん。40年もの間お住まいという、文字通りのマイホームタウン“池ノ上”で、思い出とともに今後の展望などを伺いました!

付き添いのはずがオーディションに合格してしまい、友人と大喧嘩。

 抜群のスタイルと歌唱力を武器に、長く日本のミュージカルシーンを牽引してきた女優の木の実ナナさん。還暦を過ぎてもパワフルなステージをこなし、今なお第一線で活躍するナナさんの魅力に迫ります。
そもそも、この業界を目指したきっかけは何だったのでしょうか?
 「私が幼い頃ってテレビよりもラジオが主流だったし、お祭りのときに『のど自慢』が開催されたりと、今よりも歌がずいぶん身近だったの。それで中学生のときに、歌手志望の友人が渡辺プロダクションの新人発掘オーディションを受けるっていうんで、その付き添いで新宿の『ACB HALL』に同行したのよね。そうしたら『一緒にきた子は歌わないのか?』なんて聞かれてね。それでコニー・フランシスの『カラーに口紅』って曲を歌ったのよ。私はもともと付き添いできただけだから、気楽に歌えるでしょ? 友人は真剣じゃないですか?緊張しちゃっててね。結果、私が合格しちゃったのよ。もう、帰り道では当然だけど大喧嘩(笑)。後日、事務所から両親に会いたいと連絡が来てね。私は歌手になりたいって思ってたんだけど、両親に大反対されて、最後に味方してくれたのがおばあちゃん。私の父も親の反対を振り切ってトランペッターになったので、その過去に触れながら説得してくれたんです。 これが私が芸能界に入ったきっかけかな。」

終始笑いの絶えないインタビュー現場。スタッフへの気遣いで、現場の雰囲気を盛り上げる木の実ナナさんは流石の一言。

長く業界で活躍されてきたなかで、何かターニングポイントとなることはありましたか?
 「たくさんあるけど、やっぱり細川俊之さんとご一緒したミュージカル『ショーガール』ですね。日本で初めて、日本人が手がけたミュージカルのヒット作。16年間に渡って上演していましたから、お子様からおばあ様まで広い世代に支持していただいて、まさに木の実ナナの代名詞とも呼ぶべき作品です。未だに年配の方から『この間観ました!』みたいなこと言われるんですけど、もうやってませんから(笑)。でもそれだけ、みなさんの印象に残っているということですから嬉しいですよね。
 毎年いらしていただいたお客様はもちろん、素晴らしいスタッフ、共演者、バンドのみなさんの愛情に育まれて、今の私がいる。そう思える作品なんです。」

私を観に来てくれる“ステージ”に立ち続けたい。何よりも幸せな瞬間だから。

撮影当日は定休日のお店が多く、ナナさんがお気に入りのお店で開いていそうなところを思案中。

普段お仕事をされるなかで、心がけていることなどはありますか?
 「昔から、新しい仕事をするときにはスタッフの名前をメモしていましたね。台本にちょこちょこと書き込んだりして、誰がどういう人なのかを把握しておくの。
 当時はスマホとかないでしょ?その場で調べるなんてできないから、わからないことが出てきた時、その問題は誰に聞けば教えてもらえるのか?ということ知るためにも便利なのよ。だから、スタッフの顔と名前は必ず最初に覚える必須要項。何よりも、コミュニケーションが円滑に図れれば、現場がとてもスムーズに進行できるでしょ?
 この業界って、普段の生活や社会では教えてくれないようなことがたくさんあってね。そういうときにも、メモを取るという習慣は役立ってたと思うわ。
 覚えなきゃいけないことは膨大にあるし、客観的にみればかなりキツイ環境のはずなんだけど、不思議としんどいと思ったことはないわね。むしろ、ソレが楽しいとさえ思えていたもの。
 特に若い頃は『学校なんていきたくねー』って思ってたけど、仕事のなかで学ぶことはとっても楽しかったから『あれ?こっちはいけるな』なんて考えてましたから(笑)。
 そうやっていろんな方から教わったり、支えてもらったからこそ、今も歩んでいけてるんだと思います。ってコレさっきも言ったわね(笑)。」

小じんまりとした商店街ながら、お店の種類は豊富な池ノ上。「この下町のような雰囲気がいいのよ。」

今後の展望や目標のようなものがあったら、教えていただけますか?
 「今は新しいことにチャレンジするというよりも、どれだけ長く続けられるのか?という方を意識しているかしら。
 来年の1月に下北沢の本多劇場でコンサートをやりますけど、私は大きなホールで歌うよりも、観客との触れ合いを 感じられる規模の小さめのステージの方が好きなの。規模に関係なく、歌い続けることが目標。
 とはいえ、コンサートでなく舞台に立つことも大好き。コンサートは私個人から湧き出る表現だけど、舞台での役を演じているからこそできる表現というものもあります。普段と違う自分になれるという楽しさもあるから。何にせよ、『私を観に来てくれている』という気持ちになれるステージには、格別の面白さがあるわね。」

原田芳雄や松田優作も愛した“池ノ上”は、肩肘張らずに楽しめる街。

木の実ナナさんにとって、「池ノ上」とはどんな存在なのでしょうか?
 「私は寺島町(現在の向島)で生まれ育ったから、もともとは下町っ子です。それが池ノ上に引っ越ししてきて早40年。
 初めてこの街にきたとき、世田谷という山の手なのに、とても下町っぽい雰囲気を感じたのよね。住民の方も下町気質というか、とても距離感が近くて寺島町にいたころと比べても違和感を覚えなかったから。
 この辺りは小さなお店ばかりですけど、美味しいお店もたくさんあります。それにちょっと歩けば下北沢でしょ?なかなか便利で、住むにはとてもいい環境だと思いますよ。
 かつては原田芳雄さんがご近所に住まれていたので、松田優作さんをはじめとした仲間たちが毎晩のように集ってきてねー。まさに当時は“仲間が集う街”でした。みんなでワイワイガヤガヤと騒いでいると、時間はあっという間に過ぎ去っていくもの。気づけば40年もここに住んでいますから(笑)。
 普段はとても静かな街ですけど、だからこそお店もお客さんも落ち着いた雰囲気のところが多いんじゃないかしら?
 下北沢もいいですけど、お一つ隣の池ノ上も、なかなか魅力的な街ですよ。ぜひ、みなさんも一度訪れてみてください。きっと新しい発見や出会いがあるはず!特にお祭りの時期はおすすめです。多分私も出没しているはずですから(笑)」
写真:押木良輔

◇池ノ上図鑑 ナナさんオススメスポット

1)焼肉韓てら
三軒茶屋、池尻大橋、三宿、下北沢と世田谷の代表的なエリアに囲まれた隠れ家的な焼肉屋さん。場所柄、業界の人も多く利用しているお店です。味はもちろん、いうことなし!
東京都世田谷区代沢3‑12‑26 03‑3421‑1788
17:00~24:00 (日祭日は23:30まで)
■関連リンク http://www.kantera.co.jp
2)北澤八幡神社
今からおよそ500年前の文明年間(1469~84年)、世田谷北辺の守護神として、当時の世田谷城主であった吉良家の勧請により創建された神社です。私も初詣は毎年ここにお参りしています。
東京都世田谷区代沢3‑25‑3 03‑3421‑5776
■関連リンク http://www.tokyo-jinjacho.or.jp/setagaya/2949/
3)魔人屋(まんとや)
1975年に開店した地元では老舗のジャズバーです。魔人屋とかいて「まんとや」と呼びます。小じんまりとしていて、落ち着くお店です。毎週土曜日はライブも開催されているので是非。
東京都世田谷区北沢1‑31‑3 090‑8742‑5851 19:00~3:00 (火曜日定休)
■関連リンク http://mantoya-ikenoue.blogspot.com/
4)撮影協力 ますお亭&あ~とすぺ~すMasuo
インタビュー場所としてご協力いただいたレンタルスペース。展示会、イベント、撮影、教室と幅広く活用できます。隣接する鱒夫亭では食事のみでの利用も可能です。
東京都世田谷区北沢1‑32‑3 03‑3465‑5222
11:00~18:00/鱒夫亭18:00~23:30 月曜日定休

◇PROFILE
木の実ナナ 1946年7月11日生まれ。東京都出身。
トランペッターの父とショーダンサーの母との間に長女として生れ、芸能一家の環境と向島という土地柄の下町気質が現在の木の実ナナを形成することとなる。1974年からのミュージカル『ショーガール』は通算547回公演、60万人を越す観客を動員し、ゴールデンアロー賞大賞を受賞。
1990年にはオリジナルミュージカル「阿 OKUNI 国」が絶賛を浴び、自著の「下町のショーガール」は舞台化及びNHKにてドラマ化される。
2001年、フラメンコ・ミュージカル「ロス・タラントス」で、読売演劇大賞選考委員特別賞を受賞。舞台のほかに、映画・テレビと幅広く活躍し、主なテレビ作品に「オレゴンから愛」、「たけしくん、ハイ」、「あぶない刑事シリーズ」「万引きGメン・二階堂雪シリーズ」など多数。

おすすめ情報

ようこそ!マイホームタウンの新着

記事一覧