<東京マラソン>自己新、日本人1位も転倒で41秒届かず…西山雄介号泣 パリ五輪最終切符は大迫傑
2024年3月3日 21時37分
東京マラソン(東京新聞など共催)は3日、東京都庁前から東京駅前のコースで行われ、男子は西山雄介(トヨタ自動車)が2時間6分31秒で日本勢最高の9位に入った。パリ五輪代表の残り1枠を争う男子日本勢で、日本陸連の設定タイム2時間5分50秒を突破する選手は出ず、昨年10月のマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)で3位だった大迫傑(すぐる=ナイキ)が2大会連続の五輪切符を手にした。
ベンソン・キプルト(ケニア)が2時間2分16秒の大会新記録で優勝。其田(そのた)健也(JR東日本)が日本勢2番手の11位、日本記録保持者の鈴木健吾(富士通)は28位、山下一貴(いちたか=三菱重工)は46位だった。
◆歩き始めた娘、パリに連れて行きたかった…
ゴールの瞬間、西山は両手で顔を覆い、人目をはばからず涙した。自己記録を1分以上更新しての日本人トップも、五輪を決めるタイムに41秒届かず。「(パリ)オリンピックに行きたかった」。込み上げる悔しさをかみ殺して、言葉を絞り出した。
序盤は代表を争う日本勢がそろう第2集団につけ、20キロ手前で他の選手と接触して転倒しても焦らない。ペースメーカーのタイムが設定より遅いと感じ、「後半、攻めよう」と冷静にレースを進めた。
33キロ過ぎで日本人トップに立ち、五輪代表入りの条件となる設定記録(2時間5分50秒)を上回る走りを見せるも、勝負どころの35キロ以降に失速。「最後のオリンピック挑戦だと思っていた。あきらめない」。歯を食いしばり、懸命に脚を動かしたが、夢はついえた。
昨秋の代表選考会「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」で46位に終わり、引退も頭をよぎった。それでも妻の支えや、歩き始めた1歳の長女が階段を上がろうとしている姿に「もう少し頑張り、娘のように成長したい。家族をパリに連れて行きたい」と再び立ち上がった。
それからは毎日、反省と改善の繰り返し。「今までで一番良い状態」と自信をもって号砲を迎えただけに、「強さが足りなかった」と無念さがこみ上げる。今後については「時間をおいて考えたい」とだけ話し、パリ五輪への挑戦を終えた。(渡辺陽太郎)
◆ケガに泣いた日本記録保持者・鈴木健吾は28位
男子の鈴木は27キロ過ぎで失速し、2021年に樹立した日本記録から6分半近く遅い2時間11分19秒の28位に終わった。東京五輪に出場できず「次の(パリ)五輪こそ」と過ごした4年間の集大成だったが、「シンプルに自分の力がなかった」と敗戦を受け入れた。
相次ぐけがに苦しみ、目標を見失いかけたこともあった。周囲のサポートもあって万全の状態で臨み、2年ぶりにフルマラソンを完走。「久しぶりにスタートラインにちゃんと立って、フィニッシュできた」。パリへの道は閉ざされたが、「走ることが好き。続けられるようにやっていきたい」と前を向いた。
◆山下一貴「勝負できる状態じゃなかった」
前回大会で日本歴代3位の2時間5分51秒をマークした男子の山下は、自己記録より11分以上遅いタイムで46位に沈んだ。臀部(でんぶ)から左太もも裏にかけて張りがあり、8キロ過ぎで力が入らなくなった。日本勢のトップ集団から遅れ、「勝負できるような状態じゃなかった」と振り返った。
しばらく休息を取る予定。「次は来年、東京で世界陸上があるので、トラックから頑張っていきたい」と新たな目標を掲げた。
◆キプルト、ケニア勢対決制し大会新V
疲れたそぶりも見せず、笑顔でゴールテープを切った。キプルトがケニア勢同士の競り合いを制し、2時間2分16秒で優勝を飾った。「コースレコードを出せたのはうれしい。走っていて気持ちよかった」。国内最高タイムで東京をさっそうと駆け抜けた。
前世界記録保持者のキプチョゲが20キロ手前で後れを取り、ペースメーカーも25キロで脱落する中、30キロ過ぎまで世界記録を上回るハイペースで進んだ。「そこまで速いペースだと気づかなかった。世界記録を破ったとしても不思議ではない。そういう練習をしてきたからね」。ケニア勢3人に絞られた先頭集団。30キロからは駆け引きとなり、ペースダウン。38キロ過ぎにキプルトがスパートを仕掛け、そのままトップを譲らなかった。
自己ベストを1分46秒更新し、キプチョゲの大会記録を24秒塗り替えた優勝タイムは世界歴代5位。速さと勝負強さを見せつけ、パリ五輪代表へ大きくアピールした。「代表になれたらうれしい。走る準備はできている」。自信あふれる32歳。今夏、パリでの快走を思い描いていた。(森合正範)
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