億単位のカネが光と音に化ける…東京都庁プロジェクションマッピング 「都立高ボロボロ」「困窮者支えて」の声も

2024年2月29日 12時00分
 東京都庁舎をスクリーンに映像を流すプロジェクションマッピングが25日に始まった。建物に映す常設展示としては最大でギネス記録に認定されたが、その予算7億円。一連の事業は計約18億円に上り、「高すぎる」「他に使い道があるのでは」との声が上がる。都は新たな観光資源として打ち出す考えだが、そもそも必要なのか。(宮畑譲)

東京都庁の壁面に映し出されたプロジェクションマッピング

◆「新しい名所に」と小池知事は言うが…

 「新しい名所になるよう世界にPRしていきたい」。25日のオープニングイベントで、小池百合子知事はこう述べた。48階建て、高さ約240メートルの第1本庁舎の壁面に、東京の観光スポットなどを毎日午後7時から30分おきに投影する。
 都は他にも都議会議事堂や旧小田急百貨店などでプロジェクションマッピングを展開。これらを合わせ、本年度の一般会計予算から計約18億円を支出している。24年度予算案にも庁舎分9億5000万円、その他約10億円を計上。「東京の夜に新たな”楽しさ”と”賑(にぎ)わい”をもたらす重要なツール」「東京のキラーコンテンツとすることで、夜間観光の盛り上げ」をうたう。

小池百合子東京都知事(資料写真)

 それにしても、一体何にいくらかかっているのか。都の担当者に聞くと「機器調達、電気代を含む運営費、デザイン料、コンテンツ制作費など全てを含んだ額」との答えだった。

◆「いいですよね。東京はお金があって」

 都庁周辺にいた人にも聞いた。庁舎を仰ぎ見る新宿中央公園で犬に散歩をさせていた主婦(52)=渋谷区=は「いらないですよね。息子が通っていた都立高校の校舎はボロボロ。子どものためにお金をかけてほしい」と税金の使い道として納得いかない様子。
 新潟市から都内に単身赴任中の男性会社員(49)は「地方の自治体で18億円もあったら、何ができるだろうって思いますよ。費用対効果があればいいんじゃないですか。いいですよね。東京はお金があって」と皮肉まじりに話した。

プロジェクションマッピングで東京都庁の壁面に映し出された都庁=25日、東京都新宿区で

 鮮やかな映像で彩られる都庁舎の周辺では、支援団体が毎週行っている生活困窮者への食料品配布に長い列ができている。

◆「18億円あれば、かなりの数の住宅が…」

 生活困窮者支援に携わってきた「つくろい東京ファンド」代表理事の稲葉剛氏は「コロナ禍以降、困窮する人が若年層、外国人、女性と多様化している。ネットカフェで寝泊まりしている人も多い。18億円あれば、かなりの数の住宅が確保できる。見た目を飾り立てることに予算を使うのではなく、苦しい人を支えるために予算を充ててほしい」と訴える。
 そもそも、東京には東京タワーや雷門、東京スカイツリーと観光名所はたくさんある。銀座、六本木など夜賑わう繁華街もある。新宿駅東口の歌舞伎町が近いと言えば近いが、西口の都庁周辺はオフィス街。他の観光と合わせるには不便な場所にも思える。

◆「今更なぜプロジェクションマッピング?」

 城西国際大の佐滝剛弘(よしひろ)教授(観光学)は「プロジェクションマッピングは東京ディズニーランドをはじめ各地のテーマパークで以前からやっている。今更なぜ?と感じる。観光客の誘因力は小さいだろう」と指摘。オーバーツーリズムの問題などから、インバウンド(訪日客)は地方に分散するのが近年の潮流だとして、こう批判する。
 「日本の観光に何が足りないのか。住民にプラスになるのか。そうしたことを突き詰めて考えたのか疑問だ。予算に見合う深い理念やコンセプトが見えない」

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