ツイッター創始者が支援する「ブルースカイ」ってどんなSNS? マスク氏が「改悪」したXの対抗馬になれるか

2024年2月9日 12時00分
 世界で約5億人、日本で約5800万人の利用者がいるとされる「X(旧ツイッター)」。だが、著名起業家のイーロン・マスク氏による2年前の買収後、閲覧数稼ぎ投稿が激増するなど、「改悪」を嘆く向きは多い。そんな中、ツイッター創始者らが支援する新たなSNSが6日から一般ユーザーに公開され、注目を浴びている。その名は「Bluesky(ブルースカイ)」。Xの代わりになり得るのか。(岸本拓也)

◆以前のツイッターとほぼ変わらぬ印象

一般利用が可能になったSNS「ブルースカイ」

 記者も早速ブルースカイを使ってみた。スマートフォンにアプリをダウンロードし、メールアドレスとパスワードを入力し、携帯電話番号による認証などを経て利用できた。日本語で表示された画面は、Xというか以前のツイッターとほとんど変わらない印象だ。
 それもそのはず、もともとブルースカイは、旧ツイッターの共同創業者ジャック・ドーシー氏が着想したもので、Xとは「兄弟」のような存在だからだ。2023年2月に利用者を招待者に限定してアプリを公開したが、利用者を増やすため一般公開に至った。現在はXと直接の関係はない。

◆独占的管理のX、分散型のブルースカイ

 特徴は、アプリの開発主体と運営主体が異なり、Xのように一つの企業が独占的に管理するのではなく、多数の個人やグループがサーバーを運営する「分散型SNS」である点だ。
 ITジャーナリストの三上洋氏は「これまでXが決めたことが絶対だったが、分散型ではサーバーを持つ個人や団体がゆるくつながり、それぞれのルールで運営が可能になる。例えるなら欧州連合(EU)という大きな枠組みの中で、各国が法律を決めて運営するイメージだ」と説明する。
 利用者目線では、Xのようにタイムライン(ホーム画面)に「おすすめ」の投稿が勝手に表示されるのではなく、自分で表示内容を細かく設定できるようになっている。投稿の信頼性を保つため、ファクトチェック組織が「誤解を招く」「部分的に虚偽」などとラベル付けした内容を提供できる仕組みも始めるという。

◆収益狙いの投稿が急増 Xへの不信高まり…

 分散型SNSが注目される背景には、Xへの不信感がある。マスク氏が22年10月にツイッターを買収し、社名の変更や有料サービスを拡大したほか、投稿の制限や表示の仕組みの変更などを推し進めた。大幅に人員削減した結果、デマや差別的な投稿のチェックが甘くなったとの指摘もある。

メタが提供する短文投稿型アプリ「Threads(スレッズ)」のアイコン

 極め付きは、収益化に伴う偽情報の急増だ。Xへの投稿で一定の閲覧数(インプレッション)などを満たしたユーザーが収入を得られる仕組みが導入され、「インプ稼ぎ」の過激な投稿や偽投稿が氾濫。1月の能登半島地震の発生直後には、Xで偽の救助要請などが相次ぎ、問題となった。
 Xに代わる存在を求め、フェイスブックを運営する米メタが昨年7月に始めたSNS「スレッズ」などに移行する利用者も出たが、規模では5億人のユーザーがいるXが圧倒的なままだ。まだ約400万人にとどまるブルースカイはXの受け皿になり得るのか。

◆クリーンな表現の場と認知されれば可能性も

 前出の三上氏は「Xに取って代わるのは難しいだろう。ブルースカイ自体は現状、広告もなく収益を生む仕組みがない。誹謗(ひぼう)中傷対策を含めた運営コストを誰がどう負担するのかが課題だ」と指摘し、「規模ではなく、共通の趣味を持つ人などが集まる小さなコミュニティーとして運営されるのでは」とみる。
 一方、「秩序が崩壊したXのカウンターとして存在感を示せるのかが鍵になる」と話すのはITライターの井上トシユキ氏。「デマや偽情報が増え、海外で企業のX離れが起きている。ブルースカイが健全でクリーンな表現の場と認知され、企業や著名人らが利用する流れになれば、Xの対抗軸になる可能性はある」

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