<社説>「裏金」強制捜査 選挙や政策歪めたのか

2023年12月28日 07時52分
 自民党安倍派の政治資金パーティーを巡る事件で、東京地検特捜部が池田佳隆衆院議員の事務所などを政治資金規正法違反(不記載・虚偽記入)の疑いで家宅捜索した=写真、名古屋市で。
 池田氏は2021年の衆院選で愛知3区と比例代表東海ブロックとの重複立候補が例外的に認められ、復活当選した経緯がある。
 多額の「裏金」づくりを徹底的に解明することはもちろん、安倍派や議員個人の不正な資金が政策や選挙、人事を歪(ゆが)めることはなかったか、検証を求めたい。
 池田氏側は18年以降の5年間で安倍派パーティー券の販売ノルマを超えた計4千万円超の還流を受けながら、政治資金収支報告書に記載しなかったとされる。
 池田氏の事務所は8日、20~22年に安倍派から計3200万円余の寄付があったとして報告書を訂正した際、派閥からの政策活動費と認識して記載していなかったと釈明したが、言い逃れというほかない。政策活動費は党本部が議員個人に渡す資金で、政治団体である派閥には支出できない。
 池田氏は13日の臨時国会閉会後は公の場に姿を見せず、有権者に十分な説明もしていない。捜査を待つまでもなく、多額の裏金を何に使ったのか明らかにできないなら議員としての資格もない。
 自民党は21年衆院選に際し、小選挙区で連続2回以上敗れ、比例復活した議員の重複立候補は原則認めない方針だったが、14、17年の衆院選で比例復活した池田氏の重複立候補は認めた。多額のパーティー券販売と裏金の還流が選挙の公認に影響したと疑われても仕方あるまい。
 池田氏に限らず自民党は疑惑を自ら解明し、説明する姿勢に乏しい。松野博一前官房長官ら安倍派幹部5人は東京地検の任意聴取に還流分の不記載を知らなかったと主張したという。多額の裏金を知らぬ存ぜぬとは耳を疑う。
 党総裁の岸田文雄首相は政治改革に向けた新組織を年明けに設ける考えを表明したが、疑惑を自ら究明しようとせず、何を改革するというのか。「信頼回復」の言葉が空疎に響くばかりだ。

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