国民負担「1647億円」ではとても済みそうにない大阪万博 インフラ整備9.7兆円、国費の割合は非公表

2023年12月22日 06時00分
 2025年大阪・関西万博の誘致から開催までに直接かかる国費のみを「万博の国費負担」と定義し、1647億円と試算した政府の説明について、道路や鉄道といったインフラ整備などの費用を含めておらず、全容からは程遠いとの指摘が出ている。万博に関わりのあるインフラの整備費などについて、政府は「万博だけを目的にした支出とは言えない」と主張。野党は、万博に対する国民負担がどこまで膨らむのか、国会で具体的に調査するよう求めている。(大野暢子)

◆「直接関係する」インフラだけでも8390億円

 政府が19日に公表した試算では、万博に関連づけて国や自治体、民間が投じるインフラ整備費に9兆7000億円を計上。このうち、万博に直接関係するのは8390億円としている。内訳は、下水道整備や地下鉄延伸などに810億円、道路整備や関西空港の機能強化などアクセス向上に7580億円とした。
 インフラ整備費に占める国費の割合について、内閣官房の国際博覧会推進本部事務局は「国から自治体へ交付する金額が年度ごとに変わるなどの事情があり、現時点では未確定」として、非公表とした。万博開催に欠かせない会場周辺のインフラについても「万博だけでなく、大阪・関西地域の経済を支え、開催後も利用される」として、万博の国費負担に含めないと結論づけた。

◆「夢洲を開催地にしたせいで整備が必要になっている」

11月27日の参院予算委員会では、立憲民主党の辻元清美氏が「夢洲(ゆめしま)はゴミなどの埋め立て地で、交通アクセスも悪かった。ここを開催地にしたせいで、多くのインフラ整備が必要になっている」と指摘。少なくとも会場周辺のインフラ整備費は万博の経費に含まれると訴えた。政府の試算公表後、X(旧ツイッター)では「インフラの整備費も国民負担だ」などと問題視する声が相次いでいる。
 政府は、万博での実証実験などの事業をまとめた各府省庁の行動計画(アクションプラン)に3兆4000億円の国費がかかることも公表。会場で運航が検討される「空飛ぶクルマ」や多言語翻訳技術の高度化など、万博開催を前提にした事業が並ぶが、自見英子万博相は記者会見で「万博の有無にかかわらず実施されるものだ」と強調。万博の国費負担には入らないとした。
 こうした政府の姿勢を受け、立民は万博の「総費用」を明確にするための「予備的調査」を衆院に要請した。要請書では「なし崩し的に税金が投入されることで、さらに国民負担が増加することが懸念される」と説明。来年の通常国会までに、より詳細な国費負担を公表するよう求めている。

◆万博がなければ生じなかった費用は、経費とみるべき

 関西学院大の冨田宏治教授(日本政治思想史)の話 政府公表の試算では、万博を巡る国民負担の全容はほとんど明らかになっていない。インフラ整備やアクションプランに巨額の費用が投じられるのに、そこに含まれる国費は見えなくされている。万博がなければ生じなかった費用は、万博の経費とみるべきだ。政府がさらなる費用の透明化に努めなければ、国民への説明責任を果たしたとはいえない。

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