<社説>朝鮮半島の緊張 南北ともに自制必要だ

2023年12月5日 07時47分
 北朝鮮は韓国との間で2018年に署名した南北軍事合意の事実上破棄を宣言。南北軍事境界線付近の監視所を復活させ、兵士や火器を再配置した。対抗する形で韓国側も監視所を段階的に復活させる方針を表明した。
 境界線付近で緊張が高まれば、偶発的衝突につながりかねない。南北双方に強く自制を求める。
 北朝鮮は11月21日、軍事偵察衛星を打ち上げ、韓国政府は対抗措置として、軍事合意のうち飛行禁止区域設定の効力を停止し、監視・偵察活動を再開した。
 北朝鮮が軍事合意を事実上破棄し、監視所を復活させたのは韓国側のこの措置を受けたものだ。北朝鮮は境界線付近に「強力な武力と新型軍事装備を配置する」と宣言し、軍事衝突が発生した場合、韓国が責任を負うと強弁する。
 南北軍事合意は北朝鮮に融和的な文在寅(ムンジェイン)・前韓国大統領の下で結ばれた。軍事的な緊張を緩和させるための措置として、非武装地帯(DMZ)の監視所の撤収や共同警備区域(JSA)の非武装化、軍事境界線付近上空の飛行禁止区域設定などが盛り込まれた。
 北朝鮮は事実上の合意破棄により、撤収した11カ所全ての監視所を復活させ、重火器の搬入などを進めているとされる。
 さらに北朝鮮軍はJSAに配置する兵士に拳銃を携帯させたり、沿岸部で砲門の開放を増やしたりするなど軍事力再配備の動きを活発化させている。
 北朝鮮は先に打ち上げた軍事偵察衛星が任務に着手したと発表。北朝鮮に続き、韓国も軍事偵察衛星の打ち上げに成功した。南北の軍拡競争は、宇宙での監視網構築でも加速している。
 韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は北朝鮮に厳しい姿勢を取っており「真の平和は圧倒的で強力な力によって築かれる」と強調している。
 しかし、軍事力で対抗し合えば朝鮮半島だけでなく、アジア・太平洋の緊張は高まるばかりだ。
 北朝鮮の動きを到底見過ごすことはできないが、韓国側にも慎重な対応を求めたい。南北双方が対話の努力を怠ってはならない。

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