<社説>来年の春闘 賃上げ機運を高めたい

2023年11月15日 07時42分
 連合が2024年春闘で「5%以上」の賃上げを要求する方針を公表した。厚生労働省によると9月の実質賃金は前年同月比18カ月連続の低下となった=グラフ。家計は厳しさを増しており、賃上げの継続に向けた機運を高めたい。
 岸田文雄首相は政府と労働界、経済界による「政労使会議」を11月中に開く方針で、来年の春闘に向けた動きが本格化する。
 連合は賃上げ目標を23年の5%「程度」から「以上」に変えた。繊維、流通、外食などの労働組合で組織するUAゼンセンも今年の6%「程度」から「基準」と目標をやや明確化した。
 春闘をけん引する大組織が表現を強めたとはいえ目標値を変えておらず、春闘全体の勢いをそぎかねない。労働界の指導層は賃上げに向けた強い意欲を、今以上の目標数値を掲げて示すべきだ。
 連合によると23年春闘は全体で3・58%と30年ぶりの賃上げ率を実現したが、従業員100人未満に限ると2・94%にとどまる。
 雇用者数の約7割を占める中小企業でも大幅な賃上げが実現しなければ、個人消費の回復にもつながらない。
 企業規模による賃上げ格差が許されてはならず、労使交渉や政労使会議など、あらゆる討議の場を通じて「来春は中小最優先」を徹底してほしい。
 中小の賃上げ低迷は価格転嫁の遅れが大きな要因でもある。取引先の大企業には円滑に価格転嫁に応じるよう強く求めたい。
 23年春闘では、定期昇給を除くベースアップ(ベア)部分は2%強(連合調べ)と低かった。給与全体の底上げに直結するベアが上がらなければ、物価高に対応することは難しい。
 輸出関連を中心に多くの大企業は、円安の追い風で好業績が続いている。内部留保は膨れ上がり、大幅ベアを実現する原資は確保されている。経営者は「ベアは社会的責務」と肝に銘じてほしい。
 各企業の賃上げ努力を、政府が支えることも必要だ。安倍晋三政権当時に導入された賃上げ促進税制の適用条件緩和や、税額控除の規模拡大をさらに進めるべきだ。

関連キーワード


おすすめ情報