菅直人・元首相が次期衆院選で東京18区不出馬、後継に松下玲子・武蔵野市長「もう一度政権交代を」

2023年11月5日 20時37分
 立憲民主党のかん直人元首相(77)=衆院東京18区=は5日、都内で記者会見し、次期衆院選に同選挙区から立候補しないことを正式に表明した。要職を歴任し、高齢であることも踏まえ「潮時だと考えた。若い人にもっとチャレンジしてほしい」と語った。
 菅氏は印象深い出来事として、厚相時代に対応した薬害エイズ問題や、首相として直面した東日本大震災・東京電力福島第1原発事故に言及。特に原発事故については「対応を誤れば、関東地方全部に住めなくなるギリギリの状況だった」と振り返った。

次期衆院選では東京18区から出馬しないことと、武蔵野市の松下市長の支援を表明した菅直人元首相

 3年3カ月で終わった民主党政権に関し「政権交代があることが、民主主義国家の健全なあり方だ。自民党に籍を置いたことのない私が首相を務めたのは、民主主義が機能したということだ」と語った。
 菅氏は政界引退について「きょうはっきり言えるのは、次期衆院選にこの選挙区から出ることはない」と述べるにとどめた。一方、他の選挙区や比例代表で立候補する可能性を問われ「現時点では考えていない」と答えた。
 菅氏は、1980年の衆院選で社会民主連合(社民連)から初当選。96年に自社さ連立内閣の厚相として初入閣し、2009年に誕生した民主党政権では、10年6月から11年9月まで首相を務めた。首相退任後は脱原発に向けた訴えに注力した。現在は立民の最高顧問。(大野暢子)

◆菅氏「ぶれない松下さんなら有権者の信頼を勝ち取れる」

 東京都武蔵野市の松下玲子市長(53)は5日、同市内で開いた自身の集会で、次期衆院選に東京18区から立候補する意向を表明した。同選挙区選出の立憲民主党の菅元首相が後継候補として支援する。
 松下氏は支持者らを前に「もう一度政権交代を実現し、政治を大きく変化させたい」と国政への思いを語り、「誰もが未来を切り開くことのできる世の中を目指し、国の政治に挑戦する」と宣言した。

国政への意欲を語った東京都武蔵野市の松下玲子市長

 集会には、菅氏も駆け付け「まっとうな市政運営をしてきた松下さんが後継の候補として最適。ぶれない松下さんなら有権者の信頼を勝ち取れる」と述べた。
 松下氏は今後、任期途中で市長を辞職し、立憲民主党に公認申請する予定。辞職の時期については「市政への影響は最小限になるよう調整している」として明らかにしなかった。
 松下氏は1970年、名古屋市生まれ。会社員や都議などを経て2017年の市長選で初当選し、現在2期目。武蔵野市初の女性市長として注目され、自らの子育て経験を踏まえて子育て支援に力を注いだ。認可保育所などの待機児童ゼロや18歳までの医療費無償化などを実現した。
 一方、21年12月の市議会で住民投票条例案が反対多数で否決された。市内に3カ月以上住む外国籍の人にの日本人と同様に住民投票の投票権を認める内容だったが、反対派から激しい街宣活動などを受けた。
 東京18区では、いずれも新人で自民党の福田かおる氏(38)や共産党の樋口まこと氏(36)、参政党の徳永由紀子氏(46)の立候補が決まっている。(岡本太、花井勝規)

◆市川房枝氏の選挙参謀だった菅氏、自身の後継は「若い女性に」

 菅直人元首相が地盤とする東京都武蔵野市で都議や市長を務めてきた松下玲子氏は、自身の選挙で菅氏の強力な支援を受けるなど緊密な関係を築き、菅氏の「後継者」として有力視されていた。

記者会見する菅直人元首相(右)と武蔵野市の松下玲子市長=5日、東京都武蔵野市で

 松下氏は、旧民主党が政権交代に向け地歩を固めつつあった2005年、都議選武蔵野市選挙区(定数1)に同党の公認候補として立候補。菅氏が強みとしてきた、市民の自主的な活動で支えられる「草の根選挙」を継承し、初当選した。
 3期目を目指した13年は一転、前年末に与党から転落した民主への逆風が吹き荒れ、菅氏が頻繁に応援に駆けつけたものの落選。17年に再び落選した後に挑んだ同年の武蔵野市長選では、菅氏の全面支援で同市初の女性市長となった。
 菅氏は20代の時、女性活動家の故市川房枝氏の選挙で参謀を務めた経験を政治の原点としており、かねて周辺に「自分の後は若い人、できれば女性に託したい」との意向を語っていた。

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