宮本恒靖氏が日本サッカー協会の会長選に立候補へ…元代表選手が「組織トップ」はうまく行くのか

2023年11月2日 12時00分
 日本サッカー協会(JFA)の次期会長選挙に、元日本代表の宮本恒靖氏が立候補を希望しているという。元選手がスポーツ団体トップに就くケースは少なくないものの、日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長のように残念ぶりが目立つことも。アスリートから組織のトップに転身する上でカギになるのは何か。(曽田晋太郎)

◆W杯に2度出場、「バットマン」とも

 次期会長選に出馬意向とされる宮本氏は大阪市出身の46歳で、同志社大卒。Jリーグのガンバ大阪やオーストリアのザルツブルクなどでプレーした。
 日本代表としてはワールドカップ(W杯)の2002年日韓、2006年ドイツ両大会に出場、主将も務めた。日韓大会では折れた鼻骨を守るためにフェースガードを着けてプレーする姿が世界中で注目を集めた。

引退試合の際、フェイスマスクを付けて出場した宮本恒靖氏=2012年、神戸ホームズスタジアムで

 英語も堪能で、2004年のアジア杯で審判に交渉してPKのゴールサイドを変えさせたことが話題に。引退後に務めたガンバ大阪の監督としては、リーグ2位とシーズン途中解任を経験した。その後、昨年3月にはJFAの理事、国際委員長に就任し、今年2月から協会ナンバー3の専務理事を務めている。

◆サッカー協会って何する組織?歴代の会長は?

 JFAの会長選は12月24日に予定される。これに先駆け、11月25日までに評議員16人以上の推薦を得られると正式な候補者になる。
 今後が注目されるJFAはどんな団体なのか。
 歴史は古く、1921年に大日本蹴球協会として設立された。現在担う役割は幅広く、JリーグとWEリーグ、日本フットボールリーグ(JFL)、なでしこリーグ、男女のフットサルリーグなどを所管するほか、強化活動として日本代表の招集、選手や指導者、審判の育成も行い、競技の普及活動や元選手らの学校訪問など、社会貢献活動にも取り組む。

日本サッカー協会の会長選出馬が取り沙汰される宮本恒靖氏=2023年、東京都内で

 JFAの会長は現職の田嶋幸三氏で14代目になる。初期の会長は経済界や政界関係者が務めていた一方、近年は第9代の故・岡野俊一郎氏、第10代の川淵三郎氏、そして現職の田嶋氏ら元選手が多い。
 サッカージャーナリストの後藤健生氏によると、戦前の名選手で医師としても活躍した4代の故野津謙氏(在任55~76年)が元選手として初めての会長で「日本のサッカー界を引っ張ってきた」。
 一方で元選手の会長の中には、トップダウンの色合いが強かったケースもあったと評する。それでも「JFA会長は外部の人よりも、日本のサッカーのためを思い、現場の感覚を生かせる人材が理想」と語る。

◆どんなリスクが? 成功のカギは?

 スポーツ界を見渡すと、元選手が組織トップを務めるケースは少なくない。
 例えば、サッカーのフランス代表だったミシェル・プラティニ氏は欧州サッカー連盟(UEFA)会長を務めた。JOC会長の山下氏は元柔道の世界王者だ。昨年には、日本バレーボール協会の会長に川合俊一氏が就いた。
 ただ、プラティニ氏は過去に金銭絡みの事件への関与が取り沙汰され、山下氏は東京五輪を巡る問題で批判を浴びた経緯がある。
 元選手はスポーツ団体のトップとして適任なのか。
 帝京大の川上祐司教授(スポーツマネジメント)は「元選手であれば競技の本質を知っているので、そのスポーツを強化する面でメリットはあるだろう。ただ、井の中のかわず状態でガバナンスが機能しなくなるリスクもある」と語る。
 では、成功のカギをどう考えたらいいのか。
 前出の後藤氏は「独裁に陥らないために大切なのは何よりもコミュニケーション能力。何をやりたいか、外部にうまく発信できるかも問われる」と指摘した。

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