慰安婦合意は「日本への圧力の成果」 韓国史上初めて罷免された大統領・朴槿恵氏が回顧録

2023年10月18日 17時00分
 国政に私的な知人を介入させたなどとして、韓国憲政史上初めて弾劾・罷免された大統領となった朴槿恵パククネ氏(71)が、韓国紙・中央日報で回顧録の連載を始めた。国政での過ちを認めつつ「弾劾に値するほどではなかった」と主張。日本政府との間での慰安婦合意や軍事情報包括保護協定(GSOMIA)締結の舞台裏についても語り、意義を改めて強調している。(ソウル・上野実輝彦)

朴槿恵元大統領のインタビューや回顧録が掲載された中央日報=上野実輝彦撮影

◆合意破棄の文在寅氏を批判

 中央日報は9月末、朴氏の大型インタビュー記事を掲載。10月からは有料の電子版で週3回、より詳細な回顧録を連載しており、40回程度続く予定という。
 初回で語ったのは、日本政府が10億円を拠出する形で慰安婦問題の最終解決を日韓間で約束した2015年12月の慰安婦合意だ。「共同繁栄すべき重要な隣国同士に過去のしこりがあってはいけない」との考えから、大統領任期中に解決する決意だったという。
 しかし、その方法は日本側へ圧力をかけることだった。ドイツのメルケル元首相ら海外首脳らに「日本は厚かましく知らんぷりしている」などと伝え続け、合意成立は安倍晋三首相(当時)が「国際圧力に屈した」結果だとした。
 合意は日韓両国で批判を受けたが、「国家間交渉で意志を100%貫けることはあり得ない。現実的に得られる最大値だった」と語り、安倍氏に対しても「合意が破れないよう努力している」と評価した。
 一方、事前に合意内容を伝えていた元慰安婦支援団体が「聞いていない」と主張し始め、反対世論に火が付いた。事実上、合意を破棄した後任の文在寅ムンジェイン氏を「韓国の信頼はどうなるのか。他に代案があるのか分からない」と批判した。

◆南北緊張の中 日韓軍事情報協定

 慰安婦合意や国政介入疑惑への批判がうずまく16年11月、日韓GSOMIAが締結された。韓国軍や米国も望んでおり、朴氏自身も「いつか必ず結ばなければならない」と考えていた。
 締結したのは国会で弾劾訴追案が可決される約2週間前。「締結できず獄中に入ったら心が痛かっただろう。(その前に締結でき)幸いだった」と振り返る。
 推進の原動力となったのは、北朝鮮による同年の核実験や長距離弾道ミサイル発射だったという。朴氏は大統領就任後、「『核を放棄すれば共同繁栄できる』とのメッセージを送ってきたが、返ってきたのは核実験だけ」。朴政権下では緊張した南北関係が続いた。
 同じ年に高高度防衛ミサイル(THAAD)の配備も決めた。中国が猛反対し、韓国企業の不買運動が展開されたが、「配備は北朝鮮から自国を守るための最小限の措置」だと説明。「中国との協力はその後も続いた」と主張した。15年に中国が実施した抗日軍事パレードへの出席は国内外で議論を呼んだが、「中国と緊密に協力する必要があり、米国とも相談して決めた」とした。

◆「弾劾されるほどの過ちはなかった」

 国政介入が問題となった崔順実チェスンシル氏については「男性秘書官にやらせにくいことをしてもらった。私心なく助けてくれる人だと思っていた」と説明し、「周囲を管理できなかった私の不覚」と謝罪した。半面、「国政運営にミスはあったが、賄賂を受け取り私利私欲で知人に利益を与えるほど堕落していない。起訴され弾劾されるほどの過ちはなかった」とし、政策的にも誤りはなかったと主張する。
 保守系の尹錫悦ユンソンニョル氏が大統領になったことで「左派政権が延長されず安堵あんどした」と語る。来春の総選挙に向けて政治的影響力を行使するとの見方については「計画はない」と否定し、朴氏の名誉回復を訴えて選挙出馬を模索する一部保守派の動きにも「しないでほしい」とくぎを刺した。

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