最年少プロ藤井聡太四段、白星デビュー 「62歳差」最年長、加藤一二三・九段を破る(2016年12月)

2023年10月11日 15時00分
【2016年12月25日朝刊より。年齢、肩書などは当時】
 史上最年少でプロ入りした将棋の藤井聡太四段(14)が24日、東京都渋谷区の将棋会館でのデビュー戦で、現役最年長の加藤一二三ひふみ・九段(76)を破った。2人の年齢差は62歳6カ月で、日本将棋連盟に記録の残る公式戦では最も年齢の離れた対局となった。(樋口薫)

◆「神武以来の天才」が絶賛した

 対局後、藤井四段は「加藤先生に教えていただいて光栄でした。もっともっと強くなりたい」と落ち着いた表情で語った。加藤九段は「攻めが強いし寄せも速い。大変素晴らしい才能の持ち主だ」とたたえた。

デビュー戦で加藤一二三・九段(右)に勝利し、感想戦で対局を振り返る藤井聡太四段=2016年12月24日午後9時17分、東京都渋谷区の将棋会館で(平野皓士朗撮影)

 藤井四段は愛知県瀬戸市在住。10月に加藤九段の持つ最年少記録(14歳7カ月)を62年ぶりに更新し、14歳2カ月でプロ入り。史上5人目の「中学生棋士」となった。加藤九段や羽生善治王位(46)ら、過去の4人は名人や竜王などのタイトルを獲得している。
 加藤九段はかつて「神武以来の天才」と呼ばれた大ベテラン。この日の対局で19世紀、20世紀、21世紀生まれの棋士とそれぞれ対戦するという史上初の記録を樹立した。
 今回の対局は第30期竜王戦の予選で、抽選により偶然、「最年少対最年長」の対戦が決まった。(樋口薫)

◆10時間半…初の長丁場でも冷静だった

 24日に行われた将棋の最年少棋士、藤井聡太四段(14)のデビュー戦は、数々の記録を持つ「棋界のレジェンド」加藤一二三・九段(76)との年齢差62歳の対局となった。数多くの報道陣が詰め掛け、予選にもかかわらず動画サイトで中継されるなど、大きな注目を集めた。

62歳差の対局を終え、記念撮影をする加藤一二三・九段(左)と藤井聡太四段=2016年12月24日、東京都渋谷区の将棋会館で(平野皓士朗撮影)

 この日の朝、中学2年生の藤井四段は制服の詰め襟姿で、対局開始の30分以上前から盤の前に座った。振り駒で後手になると、加藤九段が得意とする矢倉戦法を真正面から受けて立った。
 一方の加藤九段は敬虔けいけんなクリスチャンで、今回のクリスマスイブの対局を「神の計らいにより実現し、棋士冥利みょうりに尽きる」と喜んでいた。健啖けんたんぶりでも知られ、この日も昼食と夕食に特上寿司ずしを注文するなど気合十分。対する藤井四段は地元・愛知県の名物みそ煮込みうどんを昼食に頼んだ。
 藤井四段は、持ち時間が5時間ずつという長丁場の対局は初体験。しかし14歳とは思えない落ち着いた様子で、腰を据えて考え、じっくりとした戦いに。中盤、加藤九段が駒音高く攻めかかったが、藤井四段は的確な受けでいなして反撃。対局開始から10時間半以上たった午後8時43分、先手玉を即詰みに討ち取った。
 藤井四段はデビュー戦にも大きな緊張はなく、前夜もよく眠れたという。対局後には「加藤先生は手つきに迫力があった。年齢差に関係なく楽しめるのは将棋の魅力。いずれはタイトルを取りたいが、まずは実力を上げたい」と静かに語った。加藤九段は勝てば最年長勝利記録となるところだったが、お預けに。興奮した様子で、「藤井四段は渋い手とシャープな手の両方を指し、素晴らしい大局観だった」と絶賛していた。

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