値上げ続きで「お金を使うことに罪悪感」…食品買い控えに立ち向かうスーパーやメーカーの工夫とは

2023年8月27日 06時00分
 物価上昇による個人消費の落ち込みが目立ってきている。賃上げが物価高騰に追いつかず、消費者が節約志向を強めているためで、食品の「買い方」の変化が顕著。値上げする側のスーパーやメーカーも苦慮しており、工夫を凝らす。(並木智子)

◆削られるのは「ふだんの食事」

消費を喚起しようと一部商品の値下げに踏み切った東武ストア=東京都中央区で(並木智子撮影)

 「緊急値下げ宣言! 厳選168品を最大30%値下げ!」。首都圏に展開する食品スーパーの東武ストアは8月から、メーカー約30社と協力して全店で値下げキャンペーンを打ち出した。対象はドレッシングやビール、チョコレートなど。値上げが相次ぎ、1人あたりの購入点数が減少したためという。東京・晴海三丁目店で買い物中の女性(78)は「必要なもの以外は買わなくなった」と話す。
 同店によると、1人当たりの購入点数は7月は平均8個から7個に減った。メーカー側も相次ぐ値上げで販売数が減っていた。「買い控え」の食い止めを狙ったキャンペーンの効果はあり、購入点数は前年と同水準まで回復した。9月は生活用品にも拡大し、年内は継続する。
 消費の冷え込みは統計にも表れる。4〜6月期の国内総生産(GDP)で、個人消費は前期比0.5%減と、3四半期ぶりのマイナスに。総務省の6月の家計調査でも、食料の消費支出は物価の変動を除く実質で前年同月比3.9%減と9カ月連続で前年同月を下回る。日本生活協同組合連合会の調査では、節約の項目(複数回答)で「ふだんの食事」が最多の60.9%で「外食」を上回った。

◆9月は2014品目の食品が値上げ

 節約アドバイザーの丸山晴美さんは消費者の動向を「カゴの中の金額を予算内で収め、不要なものを買わないようになってきている」と指摘。さらに「お金を使うことに罪悪感を感じる人も少なくない」と話す。
 少しでも安く買おうと購入場所の変化もみられる。調査会社インテージによると、6月の食品の販売金額は、スーパーが2019年の月平均比で4%増。食品以外で利益を出せるため、食品の価格で強みを出しやすいといわれるドラッグストアは同32%増と大幅に伸びた。
 だが、物価上昇はこの先も止まりそうもない。帝国データバンクの調査では、9月は菓子など2014品目の食品が値上げ。9月末までの予定だったガソリン価格の政府の補助金延長や、電気・ガス代の抑制策も検討されているが、どの程度負担が緩和されるかは現時点で不透明だ。為替も円安傾向に再び拍車がかかっており、輸入品の価格を押し上げかねない。
 同社担当者は「企業も下げられるコストに限度がある。値上げも含め、最低価格ラインを探りながら判断する状態が続くのではないか」とみている。

 個人消費 家計が物やサービスの購入に充てた金額。日本では国内総生産(GDP)の半分以上を占めるため、景気の動向に与える影響が大きい。新型コロナの5類移行で外食や宿泊が回復してきているものの、相次ぐ値上げなどで食料や飲料、家電の購入の落ち込みが大きくなっている。

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