イラン、米基地報復攻撃 イラクに弾道弾 死傷者不明

2020年1月9日 02時00分

8日、イランの攻撃を受けたイラク中西部のアサド空軍基地から50キロ離れた野原で見つかった、短距離弾道ミサイル。イラク軍が回収していったという=地元テレビ局「アンバールサテライト」提供

 【カイロ=奥田哲平、ワシントン=金杉貴雄】イランは八日、革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官を殺害されたことへの報復として、米軍が駐留するイラク国内の基地二カ所を弾道ミサイル十数発で攻撃した。トランプ米大統領は八日(日本時間九日未明)に声明を出す見通しで、内容次第では全面的な軍事衝突に発展する恐れがある。
 米国防総省によると、攻撃されたのはイラク中西部のアサド空軍基地と北部クルド人自治区アルビルの基地で、十二発以上の弾道ミサイルが撃ち込まれた。米メディアによると、死者は確認されていない。イランのファルス通信によると、使用されたのは射程五百キロの短距離弾道ミサイルで、イラン西部ケルマンシャー州から発射された。
 一方、イラク政府は計二十二発のミサイルが発射されたと発表。イランの最高指導者ハメネイ師は「米国の顔を平手打ちした」と成功をたたえた。国営イラン放送は多数の無人機やヘリコプターを破壊したと伝え、米側の「八十人が死亡、二百人が負傷」と主張したが、信ぴょう性は不明だ。
 イランは攻撃を「殉教者ソレイマニ作戦」と命名し、ザリフ外相は「自衛の措置として相応の手段をとった」と正当性を主張。革命防衛隊は声明で、米国が反撃すれば「破壊的な反撃を受けるだろう」と警告したほか、ロウハニ大統領の顧問もツイッターで「米国が軍事行動で反撃すれば、地域の全面戦争につながる」とけん制した。
 トランプ氏は、ホワイトハウスに参集したポンペオ国務長官、エスパー国防長官らと対応を協議。ツイッターで「死傷者と被害状況の精査を進めているが、今のところうまくいっている」とした上で「われわれは世界で最も強力で装備の整った軍隊を持っている」と誇示した。
 司令官殺害を巡り、イランのハメネイ師は「血で染まった手を持つ犯罪者は、厳しい報復を受ける」と報復を宣言。七日に服喪期間を終えたばかりだった。これに対しトランプ氏は、司令官殺害は自衛の措置だったと強調。イランが報復に踏み切れば、「イランの五十二カ所を標的に攻撃する」とけん制していた。

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