映画「丸木位里・丸木俊 沖縄戦の図 全14部」 東京・中野で公開中 戦争の残虐さ伝える

2023年7月20日 07時40分

河邑厚徳監督

 太平洋戦争末期の沖縄戦で犠牲になった市民を描いた絵画「沖縄戦の図」をモチーフにした映画「丸木位里(いり)・丸木俊(とし) 沖縄戦の図 全14部」(河邑(かわむら)厚徳監督)。画家の丸木位里(一九〇一~九五年)、俊(一九一二~二〇〇〇年)夫妻が描いた十四点を基に、遺族や関係者の証言をつなぎながら絵の意味を解き明かし、戦争の残虐さや平和の尊さを伝える。
 「沖縄戦で日本人が写した写真は一枚もない。全部アメリカ側だ。日本側から見た形を残しておかなければならないと(考えた)」。作中、「沖縄戦の図」を描く動機を熱弁する位里の肉声が響く。
 「久米島の虐殺(1)」「-(2)」は、日本が降伏した一九四五年八月十五日以降に起きた、日本軍兵士による在日朝鮮人とその家族の惨殺などを描いた。沖縄本島最南端に追い詰められた「ひめゆり学徒隊」の姿が悲しい「喜屋武(きゃん)岬」、米軍の上陸前に渡嘉敷島の住民を襲った悲劇「集団自決」など、決意を形にした作品はどれも生々しい。

映画から ©2023 佐喜眞美術館 ルミエール・プラス

 丸木夫妻は八二~八七年に現地に入り、人々とうち解け、丹念に話を聞いて制作した。「映画は絵のガイド」と河邑。「絵と映画を見ると、沖縄戦で起きたことの、ある部分のリアリティーを感じられるかもしれない」と語る。

◆頭でなく、心で感じて

 河邑はNHKディレクターとして「シルクロード」などのドキュメンタリーを制作してきた。二〇二〇年、常設展示する佐喜眞(さきま)美術館(沖縄県宜野湾市)で見た二人の作品に「金縛りにあったように言葉を失った」といい、二十回以上通って絵と対話しながらメッセージやドラマ、ストーリーを探り、関係者に会った。「アートドキュメンタリー」と銘打つ本作は「頭でなく、心で感じてほしい」。
 二十八日まで東京・ポレポレ東中野、八月一~六日に東京都写真美術館ホール(恵比寿ガーデンプレイス内)で上映。 (上田融)

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