新型コロナ 韓国の新興宗教団体からなぜ広がったか 独特の礼拝様式 組織の閉鎖性も

2020年3月4日 15時10分

2日、韓国北部の教団施設周辺で記者会見する新天地イエス教会のイ・マンヒ教主=聯合・共同

 新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)の患者が急増する韓国では、南東部の大邱市にある新興宗教団体「新天地イエス教会」の関係者が感染者の大半を占める。この教団は既存のキリスト教団体からは「異端」とされ、集団感染を招いた批判が高まっている。 (ソウル・中村彰宏)

◆週2回の礼拝参加が義務 密着して「アーメン」

 感染拡大が始まったのは、二月十八日に大邱で六十代女性信者の感染が確認されて以降。大邱市によると、この女性信者は交通事故で入院中の同八日にのどの痛みなどの症状が出始めたが、医者が勧めた検査を拒否。その後も教団の礼拝に二度、参加した。新型コロナウイルスの感染経路は分かっていない。
 韓国メディアによると、教団は、教祖の李万熙総会長が、一九八四年に韓国で設立。信者数は韓国内に約二十一万人、海外に約三万人とされる。礼拝を毎週日曜日と水曜日に開き、信者には原則として参加が義務付けられている。昨年には中国の武漢でも教会を開設したが、教団側は「中国当局によって閉鎖されたため活動できず、信者も(韓国に)往来していない」と主張している。

2日、新型コロナウイルスの感染が集中している韓国・大邱で防疫作業に当たる陸軍部隊=聯合・共同

 集団感染の原因は、教団特有の礼拝方式にもあるとみられる。信者同士が体が触れるぐらいに密着して床に座って「アーメン」と叫び、一時間半以上続く。感染した女性信者が参加した礼拝には両日とも約千人が集まり、礼拝後は一緒に食事もしていたという。韓国の保健当局者は「密集した環境で礼拝を行ったため、密接な接触が多く起きた」と推定する。

◆キリスト教団体で「異端」 感染調査に応じない信者も

 李総会長を「救世主」と崇拝し、他の教会に入り込んで強引に信者を引き抜くため、既存のプロテスタントやカトリックなどは「異端」とし、張り紙などで「新天地立ち入り禁止」を掲げる教会も少なくないという。
 家族にも信者であることを隠すことが多く、集団感染が判明後も大邱市などの調査に応じない信者がいたのも、こうした教団の閉鎖性があるとみられる。

◆会長や幹部を告発 解散求める請願は110万人超に

 大邱市での感染拡大を受け、韓国大統領府のホームページでは、教団の解散を求める請願への賛同が三月一日時点で百十万人を超えた。また、教団の被害者団体は、感染拡大防止を妨げたとして、感染病予防法違反などの疑いで李総会長を刑事告発し、検察が捜査を始めた。ソウル市も、保健当局の業務を妨害し死者が発生したなどとして殺人容疑などで教団幹部らを告発した。
 李総会長はSNSを通じて、信者に「今回の病魔事件は、新天地イエス教会が急成長しているのを悪魔が阻止しようと起こした仕業だ」などのメッセージを送る。教団は声明で「ウイルスは中国からきたものであり、われわれは最大の被害者だ」と主張している。

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