尹錫悦大統領、統一省は「対北支援省のような役割だった」 大臣候補に北への強硬論者を指名

2023年7月3日 22時43分
尹錫悦大統領(2023年撮影)

尹錫悦大統領(2023年撮影)

 【ソウル=木下大資】韓国の尹錫悦ユンソンニョル大統領が、北朝鮮との対話や人道支援などを担う統一省について「これまで『対北支援省』のような役割を果たしてきた」と問題視し、変化を促している。同省の報道官は3日、「自由民主的な基本秩序に基づく統一政策を推進していく」と述べた。対話への機運が遠のき、南北間の緊張がますます高まりそうだ。
 尹政権は6月29日、新たな統一相候補に北朝鮮への強硬論者である金暎浩キムヨンホ誠信女子大教授を指名した。この人事に関連し、尹氏は2日、「統一省は自由民主的な基本秩序に基づく統一という憲法の精神に従い、本来の役割を果たすべきだ」との考えを示した。
 韓国政府は南北統一を巡り、1989年に盧泰愚ノテウ政権が発表した「民族共同体統一案」を公式見解として維持している。同案は南北が互いの体制を認め、交流や協力を通じて段階的に統一を進めるものだ。
 だが、現在は北朝鮮の核・ミサイル開発の進展などで情勢が変化しており、尹政権は民族共同体統一案の改訂を目指している。金氏は2月から統一省の諮問機関「統一未来企画委員会」の委員長を務め、尹政権の「新統一未来構想」(仮称)の青写真を描いてきた。
 尹政権は、対北融和を進めた文在寅ムンジェイン前政権を批判し、北朝鮮の人権問題を世界に提起する姿勢を打ち出している。金氏の起用により、統一省の業務内容がこうした基調に沿ったものに変わる可能性がある。
 韓国・北韓大学院大の梁茂進ヤンムジン教授は「南北間の対話や協力を放棄して、結局は(韓国の体制による)吸収統一を目指すという話ではないか。統一省が朝鮮半島情勢を安定的に管理しようとしてきた努力を否定することだ」と危ぶむ。

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