「簡単には崩れない」佐々木大地七段が藤井聡太王位に挑む熱い夏 羽生善治九段を振り切った一局は

2023年5月18日 22時40分

初の王位挑戦を決め、ガッツポーズを取る佐々木大地七段

 羽生善治九段(52)との激戦を制し、初の王位挑戦を決めた佐々木大地七段(27)。記者会見で「自分なりにしぶとく戦えた。挑戦は決まったがここからが本当の勝負。いい将棋を指して、結果も伴うよう頑張りたい」と抱負を述べた。(樋口薫)
 棋聖戦5番勝負でも挑戦を決めており、王位戦の7番勝負は同時並行のダブルタイトル戦となる。藤井聡太王位(20)の印象を聞かれると「常に妥協なく自分の最善を追い求める姿というのは同じ棋士として影響を受けている。自分にないものを持っている方なので、番勝負で吸収したい」と謙虚に答えた。
 王位戦では、同じ長崎県出身の師匠、深浦康市九段(51)が2007〜09年に3連覇を果たしている。「師匠も取っているタイトルで、自分としても気持ちの入る棋戦。2日制の持ち時間の使い方など、アドバイスを生かしたい」。また、第4局は佐賀県嬉野市での九州対局が予定されている。「春に九州へ帰った時、地元の方々に応援してもらった。夏にタイトル戦で帰れるのはうれしい」と喜んだ。
 自身の持ち味については「簡単には崩れないことを意識している。2日制の対局でも粘り強さを出せたら」。藤井王位との「12番勝負」という熱い夏を迎えるが「イベントの多い時期で夏は好き。充実した夏にしたい」と力強く意気込みを述べた。

◆得意の相掛かりが失敗しても落ち着いた差し回し

挑戦者決定戦を制し、激戦を振り返る佐々木大地七段

 この日の対局は、振り駒で先手となった佐々木七段が得意の「相掛かり」の戦型を選択。すると、まだ駒組みの段階と思われた序盤から、羽生九段が4筋の歩を突いて仕掛けた。佐々木七段は「こちらが愚形の瞬間に動かれ、まとめづらくなった。作戦が失敗したと思った」という。
 さらに羽生九段は先手陣に銀、角と打ち込んで飛車角交換に持ち込んだ。しかし佐々木七段も辛抱強く指して決め手を与えず、難解な中盤の押し引きが続いた。「過去の羽生九段との戦いで、読みの速さや正確さは劣っていると実感していた。今日も指していて自分の読みにない手を指され、苦しい形勢だが楽しくなる場面もあった」と佐々木七段は振り返る。

挑戦者決定戦に敗れ、対局を振り返る羽生善治九段

 両者の残り時間が少なくなる中、佐々木七段は飛車取りに出た銀で後手の玉頭に厚みを築き、ペースを握った。終盤、羽生九段も2枚の飛車を使った攻めで驚異的な追い込みを見せたが、最後は佐々木七段が何とか振り切り、大きな一勝を挙げた。
 控室で観戦していた高見泰地七段(29)は「羽生九段が序盤にジャブを放ち、一歩損しながらも、佐々木七段にどうやって手を作るかという難しい局面を突きつけた。終盤まで非常に均衡の取れた形が続いたが、佐々木七段は終始落ち着きのある指し回しで、玉の位置を整えるなど、攻めと受けのタイミングが的確だった」と総括した。

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