GDPが年率1.6%増、3期ぶりプラス成長に 新型コロナ落ち着き個人消費回復

2023年5月17日 10時44分
 内閣府が17日発表した2023年1〜3月期の国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値は、物価変動を除く実質で前期比0.4%増、年率換算は1.6%増だった。3四半期ぶりのプラス成長。海外経済の減速により輸出が落ち込んだが、新型コロナウイルスの感染が落ち着き、旅行などの個人消費が回復した。設備投資も増加した。
 景気実感に近いとされる名目GDPは前期比1.7%増、年率換算で7.1%増だった。コロナ禍で前期に急減した反動で23.0%増となった20年7〜9月期以来の高い伸びで、物価高が強く影響した形だ。
 1〜3月期の実質を項目別に見ると、個人消費が前期比0.6%増と4四半期連続のプラス。外食や自動車販売が伸びた。設備投資はマイナスを見込んだ事前の市場予想に反し、0.9%増加した。主に自動車関連の投資が拡大した。
 輸出は、GDPの統計上輸出に区分されるインバウンド(訪日客)消費が増えたものの、半導体製造装置や自動車が落ち込んだことで4.2%減となった。輸入は2.3%減だった。(共同)

◆電気料金値上げに米金融不安… 「低空飛行」続きかねず

 国内総生産(GDP)速報値が3四半期ぶりのプラス成長となった要因は、個人消費の回復だ。だが、電気料金の値上げによる家計への悪影響に加え、米国の金融不安による世界経済の減速が起きれば、日本経済の「低空飛行」は続きかねない。
 新型コロナウイルスの感染症法上の分類が季節性インフルエンザと同じ5類へ移行したことで、今回のプラス成長をけん引した外食や旅行需要の伸びは今後も見込まれている。航空各社によると、大型連休中の国内線の利用実績がコロナ禍前の水準を回復。国際線の総旅客数も前年の2倍を上回った。
 ただ、一見見通しが明るそうな個人消費だが、実質所得が伸びなければ今年後半には失速しかねない。今春闘の賃上げ率は3.7%近くと30年ぶりの高水準となる一方、食料品を中心とした物価高の影響で、実質賃金は12カ月連続のマイナス。大手電力7社が来月から電気料金を値上げするため家計負担は増す。
 日本経済は欧米に比べてコロナ禍からの回復が遅れている分、プラス成長の余地はあるとされるが、その行方は世界経済の状況次第だ。米国の金融不安から懸念される欧米の景気後退が現実となれば、日本からの輸出はさらに落ち込む。その場合、個人消費が仮に好調であっても景気の下支えは難しくなる。(押川恵理子)

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