精神障害者の「私宅監置」問う 本土復帰前の沖縄、歴史に迫る 大宮で上映会

2023年5月16日 08時00分

「過去の話ではない」と語る原義和監督(中)と佐藤晃一さん(右)ら

 本土復帰前の沖縄で続いた、精神障害者らを自宅敷地内の小屋などに閉じ込める「私宅監置」制度。障害者を社会から隔離した歴史を問うドキュメンタリー映画「夜明け前のうた〜消された沖縄の障害者」の上映会と、原義和監督のトークイベントが4月、さいたま市大宮区のレイボックホールで開かれた。(出田阿生)
 精神医療を巡っては、今年に入り東京の精神科病院「滝山病院」で患者虐待事件が問題となるなど、大きな関心が集まっている。精神障害者の地域生活を支援する公益社団法人「やどかりの里」(さいたま市見沼区)が「差別の現状を考えたい」と企画した。
 明治期に制定された私宅監置制度は戦後の一九五〇年に廃止されたが、米軍に統治された沖縄では七二年まで残った。原さんは残された数々の写真から、隔離小屋の痕跡や関係者を訪ねて撮影した。映像では、コンクリートで建てられた牢獄(ろうごく)のような廃屋が生々しく映し出された。

「夜明け前のうた」の一場面。自宅敷地内に作られた監置場所の廃屋 ©2020原義和

 原さんは「患者の抵抗は認められず、多くは死ぬことでしか外に出られなかった。その傷に対する回復も癒やしもないまま今に至る。映画では一人一人の名前を呼んで、人間性を回復したかった」と語った。「私宅監置は家族に監視を義務付けたが、今でも本人の同意なしに家族などのサインで入院させられる強制入院制度がある」と原さん。「当事者や家族に苦しみを押しつけて、大多数の人々が安寧を享受しているのが日本社会。この映画を見て、現代の問題として考えてほしい」と語りかけた。
 トークには、やどかりの里のメンバーで、全国の裁判所で係争中の生活保護基準引き下げ反対訴訟の埼玉訴訟の原告の一人でもある佐藤晃一さん(56)が参加。「映画を見て、未来をより良く変えたいと考える人がどんどん出てきてほしい」と話した。原さんは「足を踏まれている人の声にこそ、社会を変えていく最も強い力がある」とエールを送った。

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