1.8兆円、韓国SK新工場不安 「素材なくなれば生産止まる」

2019年7月4日 02時00分

韓国・清州市にある半導体大手「SKハイニックス」の工場=3日(共同)

 「素材が入らなくなれば工場の生産ラインは止まる」。韓国中部の忠清北道(チュンチョンプクト)・清州(チョンジュ)市に昨年十月、約二十兆ウォン(約一兆八千億円)を投じて完成した半導体大手「SKハイニックス」の工場。物流部門で働く男性(33)は「下請けにも影響が広まる」と不安の色を隠さなかった。日本の輸出規制強化に予防措置を取らなかった文在寅(ムンジェイン)政権を批判する声も出ている。 (清州・共同)
 三日、サッカーの競技場八つ分に相当する六万平方メートルの巨大な施設に、社員や技術者を乗せた大型バスや化学薬品を積んだトラックが列をなして次々と入っていった。
 世界市場を相手に半導体の主力製品を出荷するSKの一大生産拠点で、二〇二三年までに二十一万八千人の雇用創出と二十五兆八千億ウォンの経済効果が期待できるとの試算もある。昨年の竣工(しゅんこう)式には文大統領も駆け付けた。
 SKが強いDRAM(記憶保持動作が必要な随時書き込み読み出しメモリー)は世界シェアの三割程度を占めるとされるが、最近の業績は鈍っている。
 一九年一~三月期の売上高は六兆七千七百三十億ウォン。前年同期比で二割以上落ち込んだ。スマートフォンなどに使われる記録用メモリー半導体の需要が弱まり、出荷量が予想より早く減少したためだ。
 SKは四月、将来的な第五世代(5G)移動通信システムの普及を見越し、一九年の下半期から「需要が大幅に回復する」との見方を示していた。だが、日本の輸出規制強化が発表されたことで、楽観的な展望に影が差してきた。
 生産拠点を置く清州市は半導体事業の誘致によって開発が進む。工場の周辺には百貨店や飲食店、映画館、体育施設が整備された。SKの工場の清掃員、李仁洙さん(62)は「かつては植民地時代に建てられた日本家屋もあったが、工場や大型マンションが次々とでき街並みは一変した」と話す。韓国の経済アナリストからは規制対象の品目を韓国内の企業で賄ったり対象外の材料を用いたりすることで、代替が可能だとの見方も出ている。
 ただ、SKの関連企業で働く五十代の男性は「性能や価格で劣り、流通の仕組みが安定するまでは時間がかかる」と指摘。「日本が経済報復に出てくるのは予測できたはずなのに、政府はこれを防ぐ手だてをとらなかった」と強調し、批判の矛先を文政権に向けた。

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