GoogleもMicrosoftも…止まらない大量解雇 CEO「現実は変わった」

2023年2月6日 17時00分
 米国のIT企業の大量解雇が止まらない。新型コロナウイルス禍での「巣ごもり需要」の反動に加え、景気後退を見込んだ企業広告の停滞もあって収益が鈍り、大量の人員削減に踏み切っており、1月だけですでに7万人に迫るという統計もある。長期的な成長が見込めるIT分野での人員削減に懐疑的な意見がある一方、これまでの成長一辺倒からの転換点との見方も浮上している。 (ワシントン・吉田通夫)

◆コロナ流行後の最大を上回る

 IT企業1000社以上の解雇情報を追跡しているサイト「レイオフス・fyi」によると、今年1月だけで発表された解雇計画や実施された解雇は26日時点で7万人に迫り、コロナ流行後で最大だった昨年11月の5万人を上回った。昨年は年間で約16万人だった。
 目立つのは、昨年11月から続く巨大IT企業の大量解雇だ。1万人の解雇計画が報じられていたグーグルは1月20日、グループ人員の約6%に当たる1万2000人の人員削減を発表した。18日にはマイクロソフトも5%に当たる1万人の解雇計画を発表。昨年11月に1万人の解雇計画を示していたアマゾン・コムは先月4日に、計画が1万8000人へと拡大したことを明らかにした。
 すでに、フェイスブックやインスタグラムを保有するメタは昨年11月に1万1000人以上の解雇を発表している。同社と、グーグルの親会社アルファベット、アマゾン、アップル、マイクロソフトの巨大IT5社のうち、22年7~9月期の決算で増益を確保できたのは、同年9月にiPhone(アイフォーン)の新機種を発売したアップルだけだった。

◆「巣ごもり需要」の反動や規制強化

 IT企業はコロナ禍でも「巣ごもり需要」を背景に好調な業績を維持し、アマゾンが最低賃金を引き上げるなど各社は人員確保に奔走した。しかし、対面での経済活動が回復するに従い、反動が表面化。会員が急増していた動画配信のネットフリックスは昨年春に約10年ぶりに会員が減少に転じ、同6月に社員の約3%に当たる300人を解雇すると報じられた。
 また、米国では急激なインフレと利上げにより景気後退の懸念が高まっており、企業がネット広告を絞り込んだことも足を引っ張った。個人情報を収集して好みに合った広告を表示する「ターゲット広告」への規制強化なども背景にあるとみられる。米政府と議会は、巨大IT企業の市場支配力を問題視して分社なども迫っている。
 相次ぐ巨大IT企業の大量解雇に対し、「割高な退職金を支払わなければならず、株価は下がり、残った社員の士気や生産性の低下を招くため、効率化につながらない」(米スタンフォード大のジェフリー・フェッファー教授)といった指摘もある。
 しかし、グーグルのピチャイ最高経営責任者(CEO)は、先月20日に従業員に宛てたメッセージで「過去2年にわたり急激に成長し、対応して採用を加速してきたが、経済的な現実は変わった」と説明。これまでの拡大路線が、曲がり角に差しかかっているとの認識を示した。

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