18年度 内部留保7年連続最高の463兆円 利益、賃金反映遠く

2019年9月3日 02時00分
 財務省が二日に発表した二〇一八年度の法人企業統計(金融・保険業を除く)は、企業が蓄えた内部留保に当たる「利益剰余金」が前年度比3・7%増の四百六十三兆一千三百八億円と、七年連続で過去最高を更新した。一方、働く人たちの賃金は伸び悩み、企業の利益とは対照的だった。専門家は、景気の不透明感から、もうけを賃金に振り向けない現状が続くとみる。 (大島宏一郎)
 利益剰余金の内訳は、製造業が百六十三兆六千十二億円、非製造業が二百九十九兆五千二百九十六億円で、いずれも過去最高を更新。一八年度は世界経済の拡大で好調な企業業績が続いた。
 企業が手元に残す「現金・預金」は約二百二十三兆円で、十年前の〇八年度の約一・五倍に膨らんだが、働く人たちの賃金に当たる「人件費」は伸び悩む。一八年度は約二百八兆円で、〇八年度の約百九十七兆円に比べて5・6%の増加にとどまった。企業が稼いだお金のうち、従業員の給与やボーナスなどに回された割合を示す「労働分配率」も、十年間で74%から66%に下落している。
 賃金が伸び悩んでいる理由について、第一生命経済研究所の熊野英生氏は「バブル崩壊後に国内企業の安定志向が強まったから」と説明。企業は十月の消費税増税などで景気の先行きを不安視しているといい「利益を賃金に回さない傾向は続くのでは」と推測する。
 一方、同時に発表した一九年四~六月期の法人企業統計は、製造業の設備投資が前年同期比6・9%減の三兆六千百五十六億円で二年ぶりの減少となった。米中貿易摩擦で、スマートフォン向け部品などの需要が減ったことが影響した。

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