新しい資本主義なのに…新しくない事業の予算増額要求が止まらない 「関連する」と主張する省庁は何と説明?

2022年10月27日 06時00分
 12月に閣議決定される2023年度当初予算案に向けて、岸田文雄首相の看板政策「新しい資本主義」に関連するとして、各省庁が既存事業の予算増額を相次いで要求している。中には50年以上続く事業で求めるケースもあり、便乗や看板の掛け替えを疑う声が出ている。重点事業のみに予算を増やしていくという政府方針は、形骸化している。(山田晃史、近藤統義、砂本紅年)

◆1971年度から続く事業も

 政府は、8月末に締め切った予算の概算要求で、既存事業の減額を求める一方、重要政策への増額要求を認める「特別枠」を設けている。年末に向け編成が本格化する23年度予算では、新しい資本主義に関係する事業や、その実現を目指す経済財政運営の指針「骨太の方針」に記された事業が特別枠の対象となっている。
 経済産業省は1971年度から続く休廃止鉱山の鉱害防止工事費の一部を盛り込む。担当者は「新しい資本主義のデジタル田園都市国家構想にある減災・防災の戦略に当てはまる。最近は雨が多く、抜本的に強化したい」と話した。中小企業支援も従来ある事業の看板の掛け替えが目立つ。
 内閣府は特別枠に70項目以上を要望したものの、既存事業が約8割に上る。迎賓館の管理運営費の一部もそれに含まれる。担当者は、骨太の方針に記載されたテロの未然防止を挙げ、「国賓らの警備の予算として要求した」と説明した。農林水産省も特別枠に44項目を要望したうち、新規事業は1割しかない。環境省は自然公園の保護と活用のための整備費の一部を6年連続で盛っている。

◆「予算を効率化する目的が形骸化」

 既存事業なのに、各省庁が予算要求できるのは、新しい資本主義の定義が曖昧で対象が幅広く、経済成長とは関係のない事業でも要求可能なためだ。政権の主要施策は予算が重点配分されるため、既存事業を特別枠に入れるなどして、予算の確保を図る動きは例年見られる。
 各省からの23年度の特別枠への要望総額は、4兆3000億円を超えている。金額を明示せずに要求している事業もあり、予算編成での厳しい査定が求められている。
 国の財政に詳しい大和証券の末広徹チーフエコノミストは「新しい資本主義の概念自体が曖昧で各省庁が便乗しやすく、予算が膨張してしまう」と分析。「予算を効率化する目的が形骸化している」と指摘する。

関連キーワード


おすすめ情報

経済の新着

記事一覧