王位戦第5局が行われる茶どころ・牧之原と将棋の縁 詰め将棋を自作したあの政治家の腕前は?

2022年9月2日 06時00分
 藤井聡太王位(20)=竜王、叡王、王将、棋聖=に豊島将之9段(32)が挑戦している将棋の「お〜いお茶杯第63期王位戦」(東京新聞主催、伊藤園特別協賛)7番勝負の第5局が5、6日、静岡県牧之原市の平田へいでん寺で指される。初めて開催地に選ばれた同市は日本最大級の茶どころで、将棋とお茶の縁で盛り上がる。平田寺は江戸幕府の老中として知られ、この地にあった相良藩の藩主でもあった田沼意次おきつぐ(1719〜88年)の位牌いはいが安置されている古刹こさつでもある。

王位戦第5局が開催される予定の平田寺本堂と竹中智厚住職=静岡県牧之原市で

◆10代将軍に仕えた田沼意次ゆかり

 平田寺の本堂は、田沼が再建した建物。相良城の築城など、城下町整備に活躍したのも田沼だ。「地域のために尽くしてくださった方。ゆかりの品や足跡を大切に後世に伝えたい」と竹中智厚ちこう住職(45)はしのぶ。
 田沼の将棋の腕は定かではないが、江戸時代の伝記小説「相良海老」は、田沼を「将棋四段」と記している。愛棋家だった幕末の加賀藩家臣・岡田なろうが著した「将棋雑編」には、田沼主殿頭とのものかみ(意次)作とされる詰め将棋も残る。
 頭脳スポーツに詳しい大阪商業大公共学部の古作こさく登助教(59)は「主君の10代将軍・徳川家治は、家元の棋士と互角に渡り合う高段者。田沼は側近として御城将棋(御前試合)も観戦し、家治との関係を良好に保つために将棋を学んだのでは」と推察する。
 田沼といえば「賄賂政治家」として知られ、これまで必ずしも印象が良くはなかった。ただ「近年は、改革派の政治家としての再評価が進んでいる」と市史料館の長谷川倫和学芸員(37)は話す。商業重視の政策や外国貿易の拡大など「現代風にいえば、既得権益を脅かす政治家として嫌われた要素もあったのでは」と指摘する。
 牧之原市は、そんな田沼を顕彰し、官民連携でイメージアップを目指している。杉本基久雄市長は「歴史ファンへ、将棋ファンへと全国に多彩な話題を提供でき、来年以降も将棋を通じたまちづくりを進めたい」と開催の意義を語る。

◆誕生の地で「お~いに期待」

 「お〜いに応援しています」と伊藤園(東京都渋谷区)の三好正記広報部長(51)は笑顔を見せる。同社は「将棋とお茶を通じて、和の文化を再発見してもらえたら」と考え、2021年の第62期から王位戦の特別協賛社となった。王位戦の「言葉のひびきが良い」ことも理由となった。静岡県牧之原市には自社の中央研究所と静岡相良工場を構えていて、「牧之原対局」に社内も盛り上がる。
 研究所の設立は1986年。それまでの流通業からメーカーとしての態勢を整えたことが大きな節目になり、「お〜いお茶」は缶入り飲料として89年、この中央研究所で誕生した。今年7月末時点で、500ミリリットル換算での販売数400億本を突破するような主力商品に育った。今、この研究所と工場では計約300人が働く。
 伊藤園では昨年に続き、今年6〜7月に、キャンペーン商品として社員のアイデアから生まれた「王位お茶」限定パッケージ記念ボトル=写真=をプレゼント。1000本を製造し、4万人からの応募があるなど、インターネット上を中心に注目を集めた。

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