中村格・警察庁長官、安倍元首相銃撃事件で引責辞任 「事件阻止できた可能性高い」と報告書

2022年8月25日 22時14分
中村格・警察庁長官

中村格・警察庁長官

 安倍晋三元首相が奈良市で街頭演説中に銃撃されて死亡した事件を受け、警察庁の中村いたる長官(59)は25日の記者会見で、「人心を一新し、新たな体制で警護に臨むべきだと考えた」と辞任の意向を表明した。警察の警護に問題があったことを踏まえた事実上の引責辞任となる。後任には露木康浩次長(59)が就任する。事件を巡っては、奈良県警の鬼塚友章本部長(50)も同日、減給100分の10(3カ月)の懲戒処分を受け、辞意を表明した。

◆「検証報告書」受け警護要則刷新へ

 中村長官は、菅義偉前首相が官房長官時代に官房長官秘書官を務めるなどした後、昨年9月に就任。会見では辞任の理由として、警察庁のチームが同日公表した「検証・見直し報告書」で今後の道筋がつけられたことを挙げた。
 報告書は、警護の最大の問題点を「安倍氏の後方警戒が不十分で、容疑者に接近を許したこと」とし、警護員を適切に配置していれば「事件は阻止できた可能性が高い」とまとめた。
 安倍氏が7月8日に大和西大寺駅北口のガードレール内で演説することは、県警には前日午後7時ごろに自民党奈良県連から伝えられたが、県警の警護計画では「危険が具体的に考慮されていなかった」という。
 現場指揮官の県警警備課長が、唯一の後方警戒要員が部下の判断で配置変更されたことを把握しながら、後方への補強を指示しなかったことも問題視した。
 首相経験者の警護計画は警察庁の事前審査の対象外で、今回の計画も同庁のチェックを受けていない。
 報告書は、警護計画の作成を都道府県警に委ねた「警護要則」を刷新。従来は現職首相などに限った警察庁の事前審査の対象を元首相や閣僚らに広げ、当面は全て事前審査することにした。今後は警護計画づくりに必要な基準も策定する方針という。(山田雄之)

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