フランスの極右ルペン政党、与党に賛成で高まる存在感 左派は「反対野党」イメージ定着で足並み揃わず

2022年8月11日 19時41分

マリーヌ・ルペン氏

 【パリ=谷悠己】6月の総選挙後に招集されたフランス国民議会(下院)が夏季休暇を前に法案審議を終えた。マクロン大統領を支える連立与党が過半数を下回る状況になったにもかかわらず、多数の重要法案が成立。背景には、大幅議席増で存在感を増すマリーヌ・ルペン氏率いる極右政党「国民連合」(RN)が賛成に回ったことがある。
 下院(定数577)で与党3党が獲得した議席は250で、過半数に39足りない。マクロン氏は選挙後、野党に連立政権入りを呼び掛けたが拒否され、法案ごとに多数派を形成する必要に迫られている。
 改選前に議席数が一桁だったRNは、物価高に不満を抱く有権者らを取り込んで89議席を獲得し、マクロン氏設立の与党「再生」(共和国前進を改称)に次ぐ第2党に躍進した。今月3日に採決があった物価高への緊急対策法案は、与党と比較的立場が近い中道右派「共和党」に加え、RNも賛成し可決された。
 過去3度の大統領選を通じ、移民排斥などの強硬路線を修正する「脱悪魔化」と呼ばれるイメージ向上策を進めてきたルペン氏。「私の狙いは政権を倒すことではなく、代わりに担うことだ」と述べ、改選前から法案審議には柔軟に臨むことを強調していた。
 一方、左派勢力は対照的だ。多党分裂を解消し、151議席の統一会派を結成したものの、重要法案に同意せず「反対野党」の印象が定着した。スウェーデンなど北欧2カ国の北大西洋条約機構(NATO)入り承認案の採決は、メランション氏率いる急進左派「不屈のフランス」は反対したが、統一会派の社会党と環境派は賛成に回り、足並みの乱れも目立つ。
 政治学者のバンジャマン・モレル氏は「法案審議が予想以上にスムーズだったのは、RNと左派の利害が対立し、大きな反対勢力が生まれなかったためだ」と指摘。RNの方針転換については「下院選で弱まった有権者の極右アレルギーを完全に消し去り、次期大統領選で政権を狙う戦術だ」と分析している。

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