<解説>経済安保法成立…規制対象や運用は政府任せ 透明性の確保と丁寧な説明が欠かせない

2022年5月11日 19時45分
 経済安全保障推進法が成立した。柱の一つである先端技術開発の官民協力では、軍民両用(デュアルユース)可能な重要技術として注目される量子やAI(人工知能)などが研究対象と想定される。政府は軍事研究の意図を一貫して否定するが、多額の国費を投じ、参加する研究者や民間企業に守秘義務を課すことから、国民に見えないところで関連プロジェクトが進む懸念はぬぐえない。
 小林鷹之経済安保担当相は、研究成果が防衛分野で活用される可能性は認めつつも「先端技術の研究開発を否定すれば、わが国の科学技術イノベーションが世界から立ち遅れ、国民生活や経済活動に甚大な影響を与えかねない」と主張する。
 ただ、国内の学術界が戦後、軍事研究と距離を置いてきたのは、科学者が太平洋戦争に協力したことへの反省があったからだ。憲法の平和主義を根幹から揺るがしかねない危うさをはらむことを認識し、研究内容を巡る社会的な合意形成を図る努力を続けるべきだ。
 法律は重要物資の供給網強化や基幹インフラの安全確保などを図るため、新たに規制を導入するが、その対象や具体的な運用方法は138項目にわたって政省令に委ねられる。国会の関与がないまま、政府の判断で内容が決められてしまう懸念は解消されていない。透明性を持った決定プロセスと、国民への丁寧な説明は欠かせない。(曽田晋太郎)

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