<新型コロナ>拘置所、3密防げない 集団感染リスクに戦々恐々

2020年4月11日 16時00分

東京拘置所の共同室。法務省は収容者が新型コロナウイルスに感染しないよう防止策の検討に本格着手する=東京都葛飾区で

 刑事事件の被告らを収容する大阪拘置所の職員三人に、新型コロナウイルスの感染が確認された。拘置所や刑務所は集団感染を招きやすい密閉、密集、密接の「三つの密」がそろう。収容者にまん延した場合、対処できるのか。法務省には「何とか水際で防ぐしかない」と危機感が広がる。 (山田雄之、小野沢健太)
 大阪拘置所で最初に感染が判明したのは今月五日。受刑者の作業場を担当する刑務官がPCR検査で陽性と判定された。七日には同じ部署の別の刑務官も感染が判明。さらに三時間後、感染した刑務官と夜勤を共にした刑務官の感染も明らかになった。いずれも感染ルートは不明だ。
 大阪拘置所によると、職員全員がマスクを着け、収容者ともども手洗いやうがいを徹底していた。面会人や外部業者には、手指のアルコール消毒を強く求めていた。
 「考えられる感染防止策は取っていたはずだが…」と拘置所の清水政明調査官。「今は接触した可能性がある人をできるだけ分散させ、感染を広げないようにするしかない」と話す。職員約五百四十人のうち百三十二人を自宅待機とし、収容者六十人を単独室で隔離しているという。
 拘置所や刑務所などの刑事施設は全国に百八十二カ所あり、三月末現在で受刑者や被告ら約四万八千人が収容されている。今のところ収容者の感染は確認されていないが、感染したとしても「釈放は許されない」(法務省の担当者)のが実情だ。
 懸念されるのは集団感染だ。法務省の幹部は「『三つの密』の空間では、一気に感染が拡大する恐れがある。対処しきれない事態になりかねない」と危ぶむ。
 昨年初め、愛知県や島根県の刑務所で収容者がインフルエンザに集団感染した際は、治療薬の投与や隔離策で次第に沈静化したが、新型コロナウイルスの治療薬は開発されていない。
 法務省は十三日に作業部会を設け、感染防止策の検討に本格着手する。収容者が感染した場合、重症でなければ民間の医療機関に入院できない可能性があるとして、「軽症なら施設内の単独室での隔離」を中心に検討も始めている。
 別の同省関係者は「空いている単独室は十分にあるが、もし集団感染が起きて単独室が埋まれば、共同室も使わざるを得なくなる。今は感染予防を徹底するのが先決だ」と話す。
 元刑務官の野口善国弁護士は「収容者の感染ルートは、刑務官や面会人らに限られる。刑務官は自らが感染源になる可能性を自覚し、ウイルスを持ち込まないよう努めなければいけない」と指摘。「収容者に接する刑務官をできるだけ固定するなど、感染拡大リスクを抑える対策を強化すべきだ」と求めた。

関連キーワード


おすすめ情報

社会の新着

記事一覧