変わる摩天楼の先駆け「西新宿」 人中心の街づくりへ<街をゆく>

2022年4月10日 08時00分

西新宿の高層ビル群=東京都で、本社ヘリ「おおづる」から

 昭和から平成にかけて超高層オフィスビル街の代名詞だった西新宿の「新宿副都心」。再開発に沸く渋谷や東京駅周辺に押されて近年は影が薄くなっていたのかと思いきや、成熟した摩天楼には、人中心の街づくりという新風が吹き込まれていた。

◆かつての「最先端」

 新宿駅西口を出て少し歩くと、ほどなく高さ100~200メートル超の高層ビル群が広がる。街並みは整っていて清潔だが、どこか無機質で、立体交差する道路は歩行者を惑わすようでもある。
 だが、それも無理はない。都市計画が決定された1960年は乗用車が急速に普及し始めた時期で、車の通行を優先する街づくりこそが当時の「最先端」だったからだ。

新宿駅側から見た西新宿と周辺地域=東京都で、本社ヘリ「おおづる」から

新宿駅側から見た1964年ごろの西新宿と周辺地域=東京都水道歴史館提供

1961年ごろの西新宿一帯。画面中央に広がる「淀橋浄水場」の跡地を中心に新宿副都心が開発された=東京都水道歴史館提供

◆街歩きの魅力を高める

西新宿の街づくりに取り組む新宿副都心エリア環境改善委員会の小林洋平技術担当理事

 「人を迎え入れ、もてなす街にしていきたい」と語るのは、一帯に拠点を置く企業や大学など19者でつくる「新宿副都心エリア環境改善委員会」の小林洋平・技術担当理事(54)。同委員会は東京都や他の民間団体と連携しながら西新宿の近未来像を検討している。
 未来像の要となるのが、官民の広大な地上空間を開放し、人々の交流を増やし、最新テクノロジーも体験できる場に育てるというアイデアだ。実は歩道や公園に恵まれた西新宿では、実験的に飲食や音楽のイベントを開き、にぎわいを生んできた。地元企業は美術館や大型の屋根付き広場を整備し、街歩きの魅力を高めようとしている。

東京都が2021年に示した西新宿の将来イメージ=新宿副都心エリア環境改善委員会提供

◆「大切なのは低層部」

 今後十数年で、新宿駅と新宿中央公園を結ぶ東西800メートルの道路を「人中心」に変える構想もある。昨年は西新宿に都庁を構える都がイメージ図を公表。最新のデジタル技術を生かして「楽しく歩ける」エリアにしていく考えを示した。
 「高層ビル街でも、大切なのは低層部なんです」と小林さん。さまざまな地域の人々がふらりと立ち寄り、出会い、発見や活力をもたらす―。そんな街の進化を思い描いている。(妹尾聡太)

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