<視点> 変えませんか「男女別」出席簿 社会部・奥野斐

2022年4月2日 11時36分

2021年度から男女混合出席簿に改めた東京都足立区。東島根中では集会時、性別に関係なく整列する(同校提供)

 出欠確認や集会での整列順など、学校で日々使われる「出席簿」。この名簿が男子を先にした男女別か、性別によらず男女混合の50音順かを1月から、東京23区や多摩地区、首都圏の政令市などに尋ねた。9割超の小学校が男女混合だった一方、東京都の多摩地区の中学校で「男女別」の使用が目立っていた。
 教育現場の男女平等を目指し、遅くとも1980年代から男女混合にする動きは各地で起きていた。例えば、89年の堺市議会文教委員会でのやりとりはこうだ。
 「なぜ男女別なのか」「卒業式も入学式も、いつも男子が先。これが女子に対してどういう教育的影響を及ぼすのか」と、山口彩子議員(故人)が問う。市教育委員会側は当初「把握をしやすい。教育上で差をつけるということではない」と答えるが、次第に「自然に子どもたちの中に男子優先というか、先行というか、そういう意識がつくられてくる」と認める。堺市は翌90年、公立の全小学校と幼稚園で男女混合に改めた。
 山口さんの娘の典子さん(62)=堺市議=は、こうした経緯を6年前、日本大大学院の紀要にまとめた。当時、教職員の労働組合から「男女平等教育と出席簿とは関係ない」「混乱が起こる」と反発があったことにも触れている。典子さんは取材に「(母は)生活の中で『おかしい』と感じたことを一つ一つ問い掛け、変えた」と語ってくれた。

奥野斐記者

 このように30年前に「おかしい」と指摘されていたのに、いまの東京でも男女別の出席簿は残る。性別で分ける理由を、ある自治体担当者はかつての堺市教委や教職員組合と同様に答えた。多摩地区の中学校で男女別が多かった背景ははっきりしなかったが、一時は混合名簿を推進していた都が「推進」の方針を取り下げた際の通知が影響したとみる声もあった。
 漢人明子都議(61)は「たかが名簿、されど名簿と30年前から言われた。『たかが』というなら、変えるのも簡単なはず」と話す。保育士だった30年前、地元の東京都小金井市議会に男女混合名簿の導入を求め陳情した。昨年、都内全自治体に出席簿の調査を行い、男女別が残る現状に驚いたという。都内全校で男女混合にするよう、小池百合子都知事らに要望した。
 男女別のデメリットを指摘する声はLGBTQ(性的少数者)からも上がっている。最近は、出生時の性別と異なる性を自認するトランスジェンダーらへの対応で、性別欄や男女分けをなくしている自治体や企業もある。LGBTQらの若者の居場所「にじーず」を運営する遠藤まめたさん(35)は「毎日毎日、自分と違う性で扱われる苦痛を考えてほしい」と訴える。
 春は入学や進級で出席簿が新しくなる。ジェンダー平等を目指すなら、身近でささいなことから見直す必要があるのではないか。(社会部)

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