コロナ感染 入院までに自宅療養5日間 湯川れい子さん「苦しさと不安で眠れなかった」

2022年2月21日 06時00分
 新型コロナウイルスの感染拡大で、高齢者でも入院できず、自宅療養を余儀なくされるケースが東京都内で相次いでいる。体調が急変し、亡くなった人もいる。1月に感染した音楽評論家で作詞家の湯川れい子さん(86)は本紙の取材に、入院できるまでの自宅療養中の5日間を「夜中に血痰けったんを吐きながら苦しさと不安で眠れなかった」と振り返り、「孤独に苦しんでいる高齢者を救ってほしい」と訴える。(加藤健太)

湯川れい子さん

◆飲み薬処方も高熱下がらず

 誕生日前日の1月21日、発熱した。翌日、世田谷区で同居する長男がPCRセンターに電話してくれたが、つながらない。何十回も電話してようやく予約が取れ、検査で感染が判明した。
 オミクロン株の症状をインターネットで調べ、「軽症や無症状が多い」と23日から自宅療養をすることにした。すぐに保健所から酸素飽和度を測るパルスオキシメーターが届き、かかりつけ医にはコロナの飲み薬を処方してもらった。
 だが、熱は38度後半から下がらない。次第に胃がむかつき、水すら受け付けなくなった。薬も飲めず、吐きたくてもベッドから3メートルのトイレまでも歩けなくなった。夜中には血痰を吐き、苦しさで一睡もできない日が続いた。

◆退院まで20日

 「体力的に限界を感じた」と、かかりつけ医を介して病院を探し、27日に入院した。胃のむかつきと血痰は、コロナによるのどの炎症と胃腸炎だと診断された。重度の脱水症状や肺炎も確認された。ようやく回復し、退院できたのは今月15日だった。
 都内では2月に入り、新規感染者数の増加は止まったものの、遅れて統計に出てくる重症者数は現状でも増加傾向にある。都が発表する死者数は1月は26人だったが、2月は18日時点で229人に急増し、70代以上が85%を占める。こうした中、自宅療養者は18日時点で過去最多の92832人に上る。6日には、軽症で、本人の希望で自宅療養していた一人暮らしの80代男性がコロナで死亡した。

◆「孤独で苦しむ高齢者、みんなで救って」

 オミクロン株はコロナによる肺炎が軽症でも、基礎疾患が悪化して重症化する例が相次ぐ。湯川さんもC型肝炎などの既往症があり、自宅療養がさらに長引けば病状が悪化する危険性があったという。
 「私は付き添ってくれる家族がいたが、電話や(無料通信アプリ)LINEもできない一人暮らしの高齢者もいる。孤独で苦しんでいる同じ世代の人たちを政治や医療機関、メディア、みんなの力で救ってほしい」と祈るように話した。

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