涙が止まらない姉を妹はそっと抱きしめた…高木菜那・美帆姉妹が紡ぐ物語は続く<スピードスケート女子団体パシュート>

2022年2月16日 10時18分

女子団体追い抜き決勝 レースを終え、転倒した高木菜那(中)に寄り添う高木美帆(左)と佐藤綾乃

 姉は「ごめん」と手を合わせて泣いた。連覇目前だった日本を待っていたのは、まさかの結末だった。北京冬季五輪で15日に行われたスピードスケート女子団体追い抜きの決勝。転んだ高木菜那(29)は肩をふるわせ、妹の美帆選手(27)はそっと抱きしめた。
 北海道幕別町で生まれた姉妹。まずは2010年に美帆が15歳でバンクーバー五輪に出場した。14年のソチ五輪は出場権を逃した妹に代わり、菜那が初出場した。4年前の平昌五輪はそろって出場し、マススタートで姉が金メダル、1500メートルと1000メートルで妹が銀と銅。チームメートとして団体追い抜きで頂点に立った。

女子団体追い抜き決勝を終え、高木菜那(中)に寄り添う高木美帆(左)ら

 中学も高校も同じ。ただ、姉は妹との練習を嫌がった。「上回れないから」。才能は認めるが、負けたくない。だけど、ライバルはどんどん前を行く。平昌後の19年、美帆が1500メートルで世界記録を樹立。その姿に姉も奮い立ち、北京を「集大成」と定めた。
 その代表を決める昨年末の選考会。菜那は1000メートルと3000メートルで出場権を逃した。最終日の1500メートル。姉が執念で代表を勝ち取ると、妹は笑顔で抱きしめた。「熱いものを見せてもらった。心に響くものがあった」。ひとしきりたたえ、ふいに照れた。「なんか恥ずかしいな、こんなこと言うの」

女子団体追い抜きで銀メダルとなり、フォトセッションに臨む(左から)佐藤綾乃、高木美帆、高木菜那

 家族で目標で、ときには敵で、団体追い抜きでは仲間。大会前、菜那選手は素直に姉妹の関係を語った。「そんなにきょうだい愛があるわけじゃないですよ。だけど『高木美帆選手』のことは信頼している」。戦友との決勝は、最後のコーナーで暗転した。試合後、涙が止まらない姉の横に妹が座った。いたわるように、黙ったままだった。
 妹には1000メートル、姉にはマススタートが残る。五輪は終盤。姉妹がつむぐ物語は、もう少し先がある。(北京・永井響太)

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