元ロッテ首位打者が保育士に挑戦 63歳高沢秀昭さん、来春デビュー予定 「人生が豊かになった」

2021年12月25日 15時00分
 首位打者のタイトルも獲得した元プロ野球選手の高沢秀昭さん(63)=横浜市港北区=が還暦を過ぎて、保育士の資格取得を目指して専門学校で学んでいる。ロッテオリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)などで活躍し、引退後は野球少年たちを指導し、成長を見守る面白さに目覚めたという。来年4月から市内の保育園で働く予定で、「楽しみでしょうがない」と春を待ちわびる。(酒井翔平)

サンタクロース姿で園児とふれあう高沢秀昭さん=24日、横浜市保土ケ谷区で(由木直子撮影)

 24日、同市保土ケ谷区の認可保育園「星川こども園」で開かれたクリスマスイベント。通学先の専門学校に園から依頼があり、サンタクロースにふんした高沢さんがおもちゃを配り、園児たちとハイタッチを交わした。「サンタさんだ」と大はしゃぎする子、驚いて泣きだす子など反応はさまざま。「それが成長なんでしょうね。喜んでもらえて、来たかいがあった」と顔をほころばせた。

保育士を目指す元プロ野球選手の高沢秀昭さん=24日、横浜市保土ケ谷区で(由木直子撮影)

 北海道出身。苫小牧工業高校を卒業し、王子製紙苫小牧で野球を続けて1980年、ロッテに入団した。走攻守3拍子そろった外野手として活躍し、首位打者(88年)やゴールデングラブ賞(84、87、88年)などを獲得。92年の現役引退後はロッテでコーチとして17年間、後進の指導に当たった。
 退団後、2010年から、ロッテの少年野球教室「マリーンズ・ベースボールアカデミー」でコーチを務めた。元々子ども好きだったが、幼稚園児や小、中学生と向き合い、「好奇心を持って真っすぐに物事を見据える子どもと接するのは心地良い」と感じた。
 教室には、キャッチボールもままならない初心者もやって来る。うまく捕球できた時は、その場にいる全員に聞こえる大きな声で褒め、やる気を引き出した。「褒められた子が照れながら一生懸命取り組む様子がうれしくて」。成長を見守るやりがいを見いだした。

ロッテ時代の高沢さん(1989年5月28日、当時の川崎球場で)

 19年に契約が満了。「野球は十分やった。区切りを付け、子どもと関わる仕事がしたい」。真っ先に思い浮かんだのが保育士。61歳の挑戦が始まった。

◆未経験のピアノを猛練習

 大原医療秘書福祉保育専門学校横浜校に入学し、孫ほどに年齢が離れたクラスメートと机を並べた。「浮かないか」と心配したが、コーチ時代に若手選手を指導していた経験も生き、自宅に遊びに来るほど打ち解けた。最長2週間の保育園実習も4回体験。必修科目のピアノは未経験だったが、かつて娘が弾いていた自宅のピアノを調律し直して猛練習し、身に付けた。
 来年3月の卒業とともに保育士資格を取得する見込み。就職活動も順調に進み、今年8月に内定を得た。同校こども保育学科指導担当の斉藤誠一さん(40)は「努力することにたけ、授業に真面目に取り組んでいた。デビューは遅いが、一人前の保育士として活躍してほしい」と期待を寄せる。
 高沢さんは「保育士を目指したことで人生が豊かになった。子どもたちと一緒に遊べると思うと楽しみでしょうがない」と、リスタートを心待ちにしている。

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